ACEIとARBはCOVID-19に悪影響を及ぼさない新型コロナウイルス最新情報

ACEIとARBはCOVID-19に悪影響を及ぼさない

ACEIとARBはCOVID-19に悪影響を及ぼさない
272人の患者と3万759人の地域住民を比較したイタリアの症例対照研究

SARS-CoV-2は細胞表面のACE2を介して細胞内に侵入する。ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はACE2の発現を増加させるが、これらの薬の使用がSARS-CoV-2感染リスクやCOVID-19重症化リスクに影響を及ぼすかどうかは明らかではなかった。イタリアMilano-Bicocca大学のGiuseppe Mancia氏らは、ロンバルディア地方のSARS-CoV-2確定例と条件がマッチするコントロールを選び出して、薬の使用とCOVID-19の関係について検討したところ、ARBとACE阻害薬の影響は認められなかったと報告した。結果はNEJM誌電子版に2020年5月1日に掲載された。

著者らは、COVID-19が流行して多くの患者が入院したイタリアのロンバルディア地方で、住民ベースのケースコントロール研究を行い、ACE阻害薬またはARBがCOVID-19リスクに及ぼす影響を検討し、さらには他の降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬)や他の一般的な処方薬(脂質降下薬、糖尿病治療薬、抗血小板薬、抗不整脈薬、抗凝固薬、ジギタリス、硝酸塩、吸入ステロイド、NSAIDs、免疫抑制薬、短時間作用性β刺激薬、長時間作用性β刺激薬、他の慢性呼吸器疾患治療薬)の影響についても評価することにした。

母集団はイタリアの人口の17%に相当するロンバルディア地方の住民600万人。ケースは、2020年2月21日から3月11日までに、PCR検査によってSARS-CoV-2の感染が確認された40歳以上の患者。高血圧の治療機会が少ない40歳未満の患者は除外した。ケース1人につき最大で5人まで、診断確定日の年齢、性別、居住地域がマッチするSARS-COV-2に感染していないコントロールを選び出した。

医療記録から、2019年のケースとコントロールの処方薬の使用に関する情報と臨床プロファイルを得た。また、診断確定日前の5年間の情報を調べ、心血管疾患、癌、呼吸器疾患、腎臓病による入院歴も入手した。

ケースに該当する患者は6292人いたが、このうち20人は条件がマッチするコントロールが見つからなかったため、6272人を分析対象とした。ケースの617人は重篤または死亡した患者で、残りは軽症から中等症の患者だった。コントロールは3万759人。ケースとコントロールはどちらも平均年齢は68±13歳で、37%が女性だった。

ACE阻害薬とARBの使用は、コントロールに比べケースで多かった。ARB使用者の割合は、ケースが22.2%、コントロールが19.2%、ACE阻害薬は、それぞれ23.9%と21.4%だった。カルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿薬といった他の降圧薬や降圧薬以外の処方薬の使用も同様に、コントロールよりケースに多く見られた。その理由は、ケースに心血管疾患患者が多い(30.1%と21.7%)ことにあると考えられた。

COVID-19の粗のオッズ比は、ARB使用者では1.20(95%信頼区間1.12-1.29)、ACE阻害薬使用者は1.16(1.08-1.24)になったが、治療関連の変数や臨床状態のマーカーなどの変数を補正すると、ARBやACE阻害薬の使用は、COVID-19との間に有意な関係を示さなかった。補正後のオッズ比は、ARBが0.95(95%信頼区間0.86-1.05)、ACE阻害薬は0.96(0.87-1.07)だった。機械的換気を受けた患者や死亡した患者に限定して比較しても、補正後のオッズ比は0.83(0.63-1.10)と0.91(0.69-1.21)だった。男女別に分析しても、また、年齢に基づいて対象者を60歳未満と60歳以上にわけて比較しても、ARB、ACE阻害薬のいずれについても差は有意にならなかった。

降圧薬では、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、サイアザイド系利尿薬などもCOVID-19との間に関連は見られなかった。その他の薬の中で、補正後もCOVID-19と有意な関連を示したのは、ループ利尿薬(オッズ比1.46:1.23-1.73)、インスリン(1.37:1.19-1.58)、抗血小板薬(1.19:1.09-1.30)、経口抗凝固薬(1.16:1.04-1.30)、免疫抑制薬(1.30:1.20-1.42)、呼吸器疾患治療薬全般(1.25:1.15-1.36)だった。

これらの結果から著者らは、大規模な住民ベースの研究で、COVID-19患者にはACE阻害薬やARBの使用者が多かったが、これは心血管疾患の有病率が高いためで、COVID-19の発症や重症化のリスクに影響を与えることを示すエビデンスはなかったと結論している。

引用元 : 日経メディカル ACEIとARBはCOVID-19に悪影響を及ぼさない
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