新型コロナの「第二波」はどう乗り越えるか
抗体検査と超過死亡が示す現実新型コロナウイルス最新情報

新型コロナの「第二波」はどう乗り越えるか
抗体検査と超過死亡が示す現実

世界の多くの国で、新型コロナウイルスの流行がピークを越えた。日本でも、新規感染者数は4月12日の714人をピークに、5月5日には174人まで減少している。

現在、世界が関心を寄せるのは、「第二波」への対応だ。その際に重要なことは、第一波の対応をしっかりと総括することだ。今回は、そのポイントを述べてみたい。

まず、なすべきは、PCR検査に対しての評価だ。第一波では、PCR検査の陽性者数に基づき、流行状態が推定された。ところが、感染者の多くは軽症あるいは無症状で、PCR検査を受けることなく自然に治癒した者も少なくない。この結果、多くの感染者が見落とされた。

正確な感染者数を推計するために用いられるのは抗体検査だ。抗体とは、病原体が体内に入った際に形成される蛋白質で、これを有することは感染歴があることを意味する。世界中の研究機関が、新型コロナウイルスに特異的な抗体を検出するための検査系を確立し、臨床応用した。

例えば米国では、4月3~4日にカリフォルニア州サンタクララ郡の住民3330人に抗体検査を実施したところ、50人(1.5%)が陽性と判明した。

この地域の人口は194万3411人で、PCR検査で確認された感染者数は956人、住民人口に占める割合は0.049%だ。ところが1.5%の住民が抗体を有していた。これは、感染者の30分の1しか診断されていなかったことを意味する。

多くの感染者は無症状あるいは軽症で治癒したのだろう。となれば、新型コロナウイルスの重症化率や致死率は、これまでに報告されていたよりずっと低いことになる。

抗体検査の精度を問題視する意見もある。たしかに、本当は抗体を保有しているのに、検出できないこともあり得る。感度は7割程度という専門家もいるが、感度が不十分なら、感染者はさらに多いことになる。PCR検査の検出能力に限界があることに変わりはないだろう。

日本での感染はいつ始まったか

このような所見は、このカリフォルニア州に限った話ではない。5月6日現在、公開されている世界各地の抗体陽性率の一覧だ。1.0%~62.0%の抗体保有率が報告されている。

日本でも4つのグループの調査結果が報告されている。東京の2つのグループの陽性率が5.9%と8.0%で高く、大阪(1.0%)と神戸(3.0%)は低い。これは東京を中心に流行が拡大し、関西にも及んだという実際の経緯とも一致する。

千駄ヶ谷クリニック(東京) 検査数: 111 陽性率:8.0%
ナビスタクリニック(東京) 検査数: 202 陽性率:5.9%
大阪大学          検査数: 312 陽性率:1.0%
神戸医療センター      検査数:1000 陽性率:3.0%

5月5日現在、東京都のPCR検査での陽性者数は4712人(チャーター機帰国者、クルーズ船乗客を含まず)だ。都民の人口あたりの感染率は0.034%である。しかし、抗体陽性率は5.9%~8.0%だ。とすれば、PCR検査で判明した感染者は、全体の174~235分の1に過ぎないことになる。これはカリフォルニア州の6~8分の1より遙かに低い。このことは、日本がPCR検査を絞ったこととも一致する。

興味深いのは、抗体陽性率について、国ごとに大きな差があることだ。日本や中国などアジアは低く、欧州が高い。注目すべきは米国だ。ニューヨーク州が12.3%、21.0%と高いのに対し、カリフォルニア州は1.5%、4.1%と低い。欧州や米国東海岸などの大西洋周辺地域が高く、アジアや米国西海岸などの太平洋周辺地域が低いという見方も可能だ。

なぜ、このような差が生じるのだろうか。これについては、十分な研究が進んでいない。ウイルスの突然変異によるものか、あるいは民族的な差なのか、環境的要因によるのか、今後の検証が必要である。

ただ、これまでの研究で、欧州とアジアでは、流行している新型コロナウイルスのタイプが異なることがわかっている。もし、欧州で流行しているウイルスが強毒な場合、それが第二波でアジアに流入すれば、第一波以上の被害が出る可能性がある。

その際に必要なのは、国内で流行している新型コロナウイルスの遺伝子配列を調べることなのだが、PCR検査すら抑制してきた日本では、国立感染症研究所がクラスター対策の一環として細々と実施しているだけなので、急ぎそのための体制を整備しなければならない。

話を戻そう。抗体検査が有意義なのは、感染率の推定だけではない。流行時期の再評価にも役立つ。5月3日、パリ近郊のセーヌ=サン=ドニ県の医師たちは、昨年末にインフルエンザのような症状で入院していた患者の保存血清を用いて、抗体の有無をチェックしたところ、アルジェリア生まれの42歳の男性が陽性と判明した。この男性は、長年フランスに住み、中国への渡航歴や中国人との接触歴もなかった。

これまで、フランスで新型コロナウイルスが発見されたのは、1月24日に武漢への渡航歴がある2名のケースが最初だと考えられていた。今回の報告は、昨年末の時点で、フランスではすでに感染が始まっていたことを示唆する。

日本でも同様のことが起こっていた可能性がある。日本では、東京オリンピックの延期が決まった3月24日以降、PCR検査数が急増した。そして、感染者数が増加し、緊急事態宣言へとつながる。検査数を増やせば、感染者数が急増するのは自明のことだ。すると、検査数を増やした時期に急速な感染拡大が起こったようにも見える。果たして、実態はどうなのだろうか。

幸い、日本では日赤が輸血の献血者の血清を長期間にわたり保管している。その一部を用いれば、いつから国内で流行が始まったかは検証可能だ。既に厚労省は日赤に調査を依頼している。1日も早い結果の開示を期待したい。

「超過死亡」という流行の指標

抗体検査と並ぶもう1つの指標が「超過死亡」だ。超過死亡とは、世界保健機関(WHO)が提唱した、インフルエンザ流行による死亡数を推計するための指標だ。非流行時の場合に発生すると考えられる死亡数(悪性腫瘍や心疾患などによる)をベースラインとし、流行時の実際の死者数と比較する。

超過死亡が存在するということは、何らかの感染症の流行がなければ、死亡者の増加が説明できないことを意味する。つまり感染症の流行の度合いが測れることになる。これを新型コロナウイルスにも応用しているのだ。

米国エール大学公衆衛生大学院の研究者たちが、米疾病対策センター(CDC)の統計データをもとに超過死亡を推計したところ、3月1日から4月4日の間に約1万5000人が新型コロナウイルス感染とは診断されずに亡くなっていた。この期間に新型コロナウイルスによる死者は約8000人だから、約2倍だ。これは感染が深刻だったニューヨーク州とニュージャージー州で顕著だった。

超過死亡の推定は、世界各国で進んでいる。流行が確認されている地域では、基本的に超過死亡が確認されている。

日本も例外ではない。国立感染症研究所によると、第8〜13週にかけて、東京ではベースラインと比較して、1週間あたり50〜60人程度の超過死亡が確認されている。これは2月16~22日の週から3月22~28日の週に相当する。

国立感染症研究所のホームページから借用したものだ。実は、この時期に、韓国も台湾も感染のピークを迎えていた。ところが、厚労省は、この時期は感染を完全に抑え込むことに成功していたと説明している。現在も、この主張を変えていない。

前述したように、日本では3月24日に東京オリンピックの延期が決まり、それ以降、PCR検査数が増加する。それに伴い患者数が増える。4月7日に緊急事態宣言が発出されるが、3月29日~4月4日の週には超過死亡は消滅している。国立感染症研究所は、それ以降の超過死亡についてのデータを公表していないが、ここまではPCR検査数が示す感染者数の動向とまったく異なる。

実際の死者数と、氷山の一角しか診断しないPCR検査数、いずれが推計として相応しいかは議論の余地はない。

英医学誌「ランセット」は、5月2日に「COVID-19:毎週の超過死のリアルタイム監視の必要性」という論文を掲載している。「リアルタイム」で迅速かつ定期的に評価することを求めている。残念なことだが、日本のメディアで超過死亡の問題を大きく扱ったところはない。

一方、大阪や神戸の超過死亡の有無については、現時点では評価不能だ。大阪は第9週までのデータしか公開されていないし、神戸に至ってはデータが開示されていない。

先ほど、エール大学公衆衛生大学院の研究者がCDCのデータを用いて超過死亡を推定したことを紹介した。日本でCDCの役割を担うのは国立感染症研究所だが、データ開示については消極的だ。

第二波にはスウェーデン方式で

新型コロナウイルスの流行は長期化するだろう。米ミネソタ大学の研究者たちは、流行は1年半から2年間は続くだろうと予想している。

第一波では多くの国が都市を封鎖した(ロックダウン)。現在検証が進んでいるが、その効果には否定的な意見もある。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」は4月27日に「都市封鎖の効果、データは否定的」というサイプレス・セミコンダクター社CEOのT.J.ロジャース氏のオピニオンを掲載した。

この記事では、人口当たりの死者数と都市封鎖までの関係が調べられているが、明らかな相関はなかった。著者たちは、死亡率ともっとも相関したのは人口密度で、ニューヨーク州は都市封鎖によって恩恵を受けたかもしれないが、人口密度の低いウィスコンシン州では影響はなかったと議論している。

感染が終息するには人口の6〜7割が免疫を獲得するしかない。もっとも安全なのはワクチンを接種することだ。しかしながら、ワクチン開発には時間がかかる。第二波の対策では、ワクチン開発を急ぎながら、集団免疫戦略を推し進めることになるだろう。そして、都市封鎖は必要最小限に留めることになるだろう。

これは、第一波でのスウェーデンのやり方に近い。スウェーデンでは、高齢者にのみ自宅待機を要請し、それ以外の制限は課さなかった。一時期、高校や大学を休校としたが、小中学校は休校しなかった。50名以上の集会禁止、不要不急の旅行の禁止、小売店やショッピングモールへの入店者数の制限を課したものの、多くの店舗やレストランは閉鎖しなかった。ボルボの自動車工場は一時期閉鎖されたが、その後、再開された。

5月6日現在、スウェーデンで新型コロナウイルスと診断された感染者の死亡率は12.2%。厳しい都市封鎖を実施したフランス(19.3%)、英国(15.1%)、イタリア(13.7%)より低い。今後、超過死亡のデータを用いた再検証が必要だが、第一波で抗体保有率が25%に到達したことは特筆に値する。新型コロナウイルスと上手く付き合ったことになるのではないか。

日本では、いまだに「接触の8割減」を主張する専門家が多いが、果たして、このやり方でいいのだろうか。第一波の経験を踏まえ、もっとメリハリの効いた対応が必要ではないのか。

抗体検査や超過死亡の結果も踏まえて、日本での流行状況を再評価し、いかに経済活動を継続させながら、死者を減らすための戦略を見直すべき時期にきている。

引用元 : Forbes 新型コロナの「第二波」はどう乗り越えるか
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