新型コロナ、トシリズマブの第Ⅲ相試験開始
70施設で330例の登録目指す新型コロナウイルス最新情報

新型コロナ、トシリズマブの第Ⅲ相試験開始
70施設で330例の登録目指す

呼吸不全を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象に、インターロイキン(IL)-6阻害薬のトシリズマブの有用性を検討する国際共同第Ⅲ相試験の実施が決まった。同薬による肺炎死亡率の低下、人工呼吸器の必要性の減少などをプラセボとの比較で評価する。

サイトカインストームを阻止できるか

炎症性サイトカインのIL-6は一次免疫応答における炎症惹起で重要な役割を担っている。しかし、関節リウマチ(RA)などの自己免疫異常が関与する慢性炎症性疾患では、過剰な炎症反応により自己の組織が破壊される。トシリズマブはIL-6受容体を阻害するモノクローナル抗体製剤で、現在、RAや小児期発症の指定難病である若年性特発性関節炎などの治療に使用されている。

COVID-19患者においても、過剰な免疫応答によりIL-6が過剰発現する、いわゆる"サイトカインストーム"が発生して、肺などの臓器に致命的な損傷を与える恐れがある。サイトカインストームは、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザ感染による呼吸器疾患の一部、さらには多発性硬化症や膵炎など非感染性炎症性疾患とも関連付けられてきた。また、市中肺炎患者を対象とした以前の研究では、IL-6の発現亢進と死亡率上昇との関連が示唆されている。

COVID-19患者に対するトシリズマブ投与は、昨年(2019年)末の流行初期に中国・武漢市の重篤肺疾患合併患者21例で実施され、有望な結果が報告されていた(J Transl Med 2020; 18: 164)。中国国家衛生健康委員会は、COVID-19関連肺炎および他の肺疾患の治療ガイドラインに治療薬としてトシリズマブを追加している。

肺炎死亡率・人工呼吸器装着率の低下などを評価

今回の第Ⅲ相試験に参加する米・University of California, San Diego(UCSD)のAtul Malhotra氏は「COVID-19に対して対症療法以外に米国で承認された治療法はない。一方、COVID-19が炎症による重度の肺損傷以外にもさまざまな部位に深刻な影響を与えるというエビデンスは、次々と報告されている」と述べ、「トシリズマブは、その作用機序から炎症反応を緩和・抑制することが示唆される。同薬投与により、人工呼吸器装着などの緊急医療介入の必要性や、慢性損傷および死亡リスクが低減できるかもしれない」と指摘している。

今回の試験は、二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験で、世界70施設で約330例を登録し、UCSDでは最大20例を登録することになっている。登録基準は、ガス交換障害(Ⅰ型呼吸不全)を伴う18歳以上のCOVID-19肺炎入院患者。ランダム化割り付け後にトシリズマブまたはプラセボの単回点滴静注を行い、臨床症状が悪化もしくは改善した場合には2回目の投与を行う可能性もある。試験に必要な資金と資源は同薬の製造元のジェネンテック社が提供する。

主要評価項目は、トシリズマブ治療によるCOVID-19患者の健康状態および臨床症状の改善、COVID-19関連肺炎による死亡率の低下、人工呼吸器装着または集中治療室入室の必要性の低下などである。試験結果は今年9月30日に発表予定である。

日本国内においては、商品名「アクテムラ」で、中外製薬株式会社より発売されている。

適応症:関節リウマチ等

引用元 : Medical Tribune 新型コロナ、トシリズマブの第Ⅲ相試験開始
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