どう使い分けるPCR、抗原、抗体検査
新型コロナ第2波に備え3学会が提言
新型コロナウイルス最新情報

どう使い分けるPCR、抗原、抗体検査
新型コロナ第2波に備え3学会が提言

今後いつ起きるか分からない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の"第2波"に備えて、治療薬や検査薬の開発が加速している。5月13日にはCOVID-19に対する国内初の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」が承認・保険収載された。感染の有無を約30分で判定でき、迅速性に優れることから早期発見に有用とされるが、全ての患者に使用が推奨されているわけではない。医療現場でどう活用していくかは今後の課題だが、5月25日には、日本臨床微生物学会、日本感染症学会、日本環境感染学会が共同で、COVID-19に対する3つの検査法(核酸増幅法〔PCR〕検査、抗原検査、抗体検査)の使い分けについて提言を行った。検査法の適切な活用は「第2波への備えとしても重要になる」とし、それぞれの位置付けや最適な使用を推進するための留意点を示した。

無症状者には抗原検査を推奨せず

これまではPCR検査を中心とする遺伝子検査が広く行われ、陽性・陰性の確定診断に用いられてきた。この検査は、患者の鼻の奥(鼻咽頭)を拭って検体を採取し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に含まれる特定の遺伝子を検出する。

特徴として、検出感度が高い一方で、検査には1~5時間と時間を要する、専用の機器と検査に熟練した人材が必要、費用が高い、鼻咽頭拭い液の採取時は医療従事者や他の患者への感染予防が徹底された環境で行う必要があるといった課題がある。

簡便性が高い半面、PCR検査に比べ精度が劣るという弱点もある。添付文書によると、国内臨床検体を用いたPCR検査との比較試験では、陰性一致率は98%だったが陽性一致率は37%、行政検査検体を用いた比較では、陰性一致率は100%だったものの陽性一致率は67%だった。

このため、厚生労働省が作成した『SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン』では、使用対象者について「医師がCOVID-19を疑う症状があると判断した者に対して、必要性を認めたときに使用する」としている。

さらに、一定以上のウイルス量がないと検出できないといった限界もあることから、ウイルス量が少ない無症状者が受けることは推奨されていない。あくまで症状が出現している患者に行う検査法という位置付けだ。

抗原検査で陰性なら追加検査が必要に

抗原検査は、迅速性に優れ、偽陽性が少ないことから、陽性と判定された場合は確定診断とすることができ、入院、宿泊施設、自宅待機での療養を指示することができる。速やかな療養や早い段階での治療開始につながることが期待されるが、陰性の場合は感染を完全に否定できないため、確定診断のために「PCR検査を行う必要がある」としている。

これらの特徴を踏まえ、先述のガイドラインでは抗原検査の使用目的を「現時点では、緊急性の高いCOVID-19陽性者を早急に検知することにある」と明記。検査キットの供給が十分になるまでは検査の需給が逼迫することを想定し、当面は東京、神奈川、大阪、北海道など感染者数の多い地域の「帰国者・接触者外来」(地域・外来検査センターを含む)および全国の特定機能病院から供給を開始するとしている。

PCR検査の実施可能件数が1日で1万7,000件なのに対し、抗原検査は1週間で20万件分の実施ができるよう供給が行われる予定だという。

感染歴を調べる「抗体検査」、どう活用?

一方、SARS-CoV-2の感染歴、すなわち免疫の有無を調べる抗体検査にも注目が集まっている。この検査を用いることで、市中での感染の広がりの程度を推計できると期待されている。政府は東京や大阪などを対象に、約1万人規模の抗体検査を6月にも実施する方針を明らかにしている。

鼻の奥などを拭って検体を採取するPCR検査や抗原検査とは異なり、抗体検査は血液を採取して、SARS-CoV-2に感染した後に体内に作られる蛋白質(抗体)の有無を調べる。外来患者に対し、簡易キットを使えば、採血から約20分で判定できる。また、PCR検査や抗原検査と比較すると、検体採取時の感染リスクが低いと考えられている。

SARS-CoV-2の抗体には未解明な部分多い

だが、SARS-CoV-2の抗体に関してはまだ未解明な点が多い。麻疹(はしか)は一度感染して発症すれば生涯免疫が続くことが知られているが、COVID-19に関しては、抗体検査で陽性になっても免疫がどの程度持続するのか、あるいは再感染を防ぐことができるのかなどについては明らかになっていない。

通常、特異抗体の産生にはSARS-CoV-2に感染後2~3週間が必要だが、感染して間もない時期で体内に十分な抗体がつくられていないと抗体検査で陰性と判定されることもありうる。そのため、陰性であっても必ずしも感染していないとも限らず、逆に陽性でも必ずしも感染を防ぐ保証にはならない。

ただ、COVID-19では感染から発症、受診まで2週間ほど経過している症例もあるため、こうした場合は抗体検査が診断に役立つとしている。

抗体検査には「イムノクロマト法」などによる定性試験、「ELISA法」などによる定量・半定量といった検査法が検討されているが、提言では「その有用性に関しては検討中」としている。

唾液を用いた検査に注目も「検討中」

提言では、COVID-19患者の周囲で医療従事者などに新たな感染が見られた場合は、院内感染を疑い、感染した医療従事者と濃厚接触をした人を選別し、迅速にPCR検査などの遺伝子検査によるスクリーニングを実施することが必要とした。抗原検査は「遺伝子検査に比べて感度が劣るため推奨しない」とした。

また、現在の感染の蔓延状況を把握するために、健常人を対象としたサーベイランスとして「(PCR検査などの)遺伝子検査を行うことが最も信頼性は高い」と指摘。ただし、検体採取の煩雑さや感染の危険、検査時間、コスト、マンパワーなどにより実施が困難な場合が多い、と課題を挙げた。感染の既往の疫学調査を行う場合には抗体検査が広く用いられるとし、有用な検査と位置付けた。

一方、「鼻咽頭拭い液と同様、唾液中からもウイルスが検出されることが注目されている」としつつも、「(その有用性は)現在検討中」とした。

新たな選択肢として加わった抗原検査の活用法については「これからの課題」と指摘。抗体検査の活用法として「感染の蔓延状況を経時的かつ地域別に解析することにより、集団免疫の進行状況を把握することが可能になる」と期待を示した一方で、SARS-CoV-2への感染によって産生される抗体の感染防御効果についての慎重な検討や抗体産生の持続に関してもさらなる研究が必要になる、と今後の課題を挙げた。

引用元 : Medical Tribune どう使い分けるPCR、抗原、抗体検査
お申し込みはこちら