第2波では医療機関は最低限、発熱患者の診療を
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第2波では医療機関は最低限、発熱患者の診療を

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延に際して、PCR検査を地方衛生研究所(地衛研)に回すかどうかなど、現場でコントロールタワーの役割を担ってきた地域の保健所。20年ほどの行政経験を持つ、ある保健所の医師職員に今回のCOVID-19流行時の対応を振り返っていただいた。

――COVID-19第1波、保健所の様子はどうだったのでしょうか?

3月最終週から、医師である私は連続勤務が続いていた。緊急事態宣言が出た4月初めは、職場を出るのが毎日日付が変わってからになる生活だった。保健師については、土日は少し出所人数を減らしていたが、それでもずいぶんと負荷をかけていた。

午前中は保健所内の別担当の応援も受けながら、疑い患者の検体を各病院から集めて地衛研に送付。夕方に検査結果が上がってきたら、陽性者の受け入れ先病院の調整を行う。受け入れ先病院の感染患者用の病床だけでは足りず、その他の感染症対応が可能な個室を空けてもらうために、急きょ入院患者のベッド移動をお願いしたこともある。また、入院調整と並行して、陽性者や家族、職場に電話をして、濃厚接触者の探索も並行して行う。濃厚接触者の定義が「症状が出る2日前から」に変更されてからは、濃厚接触者を探索するのも大変になった。

その間も随時、COVID-19が気になる一般の方や医療機関から問い合わせが来る。当初は2回線しかなかった相談用の電話回線は随時増強し、最終的には10回線程度まで増やしたが、ピーク時には焼け石に水。1件あたりの電話は長くなると1時間くらいになる。保健所の電話がつながらないと言われていたのはこのためだ。

だが、電話が長くなっていたのは、検査が必要ないことを説得するための時間。基本的に電話に対応していたのは保健師だが、一部の医師からは「保健師のくせに医師に指図するのか」と言われてしまったケースもある。電話で回答・相談する内容については私が指示していたので、保健師が話そうと、医師である私が話そうと対応はまったく変わらなかったのだが……。一般の方についても、聞き取りの中で他の疾患の可能性が疑われる場合も少なくないが、野球選手の感染報道で知られるようになった味覚障害で、本人はすっかり自分がCOVID-19と思い込んでしまい、説得に苦労する。

各保健所は、過去に感染症担当を経験したことのある職員を集めたり、他の保健所事業が縮小して浮いた人員で、当座はなんとかしのいできた。それでも休日出勤などで一部の職員に負荷がかかっている。いわゆる「Afterコロナ」「Withコロナ」を考えると、それでよいとは思えない。使命感だけで今後も持続できるとは到底思えない。

――「保健所が検査を断っている」という意見も多く聞かれました。

私の働く保健所は土日も動いていたし、当初から「発熱から4日経過していないからPCR検査は受けない」ということはしていない。50歳代以上の患者では、急に悪化する可能性があったし、重症感、呼吸苦なども聞き取りながら総合的に検査するかの判断を行っていた。

逆に体温が36℃台後半で他に症状がない人や「症状はないけれど心配」という相談はすべて断っていた。医師からの相談でも、明らかに普通の肺炎や尿路感染症、花粉症としか思えないものが少なくなかった。電話を通して話を聞くだけで鑑別すべき疾患が上がるのに、PCR検査を行え、と言われても承諾できない。電話がつながりにくい時期に、一般の人向けと別に、医療機関向けの直通回線を用意して欲しいと要望もあったが、こんな連絡ばかりでは意味がない。また、明らかにCOVID-19ではない患者をすべて受けていたらば保健所も地衛研も回らなくなる。

――医療機関とのやり取りで苦労する例はよくあるのですか。

まず、多くの医療機関の先生方には、COVID-19に関する情報が少ない段階からご対応いただけたことに、大変感謝している。ただ、残念な事例も少なからず経験した。

開業医にもいろいろな考え方があった。「かかりつけの患者でも発熱ならば絶対に診ない」という医師もいれば、きちんと自分のところで一度診察を行い、「検体は取るのでPCRをしてもらえないか」とご相談いただいたケースもあった。「専門でない医師であってもすべて自分で診るべき」とは言わないが、診察そのものをしない、できないということであれば、せめて保健所ではなく平時から連携している医療機関にきちんと紹介してほしい。病院でも、必ずしもきちんとした対応がなされているわけでもない。呼吸器科・感染症科と他科とで連携が取れていない病院もある。きちんと専門の医師や感染管理看護師がいて体制が整っていても、休日や夜間に当直していた専門外の診療科の医師から、「分からないから保健所に電話した」というような例も。まずは院内できちんとコンサルテーションしてほしかった。

ひどい医療機関だと、有症状であっても疑い患者は一切医療機関内に入れずに自宅に帰し、「患者には保健所から電話があると言ってあるから」と患者の連絡先を保健所に伝えてくる例や、宛名のない紹介状とX線写真の入ったCD-Rを患者に渡して「これを持って病院を探しなさい」としていた例もあった。

――PCR検査の件数がなかなか増えなかった理由はどのように考えていますか。

少なくとも私の勤務する保健所では、問題は検体採取だった。鼻腔・咽頭拭い液の採取における飛沫感染のリスクはどうしてもネックだった。今月から唾液で検体が取れるようになったことで、このボトルネックは解消される可能性はある。ここが解消されれば、たとえ検体が増えたとしても今は民間の検査機関もある。行政でも、解析中に次の検体の前処理を行って、一日に複数回解析を行ったり、夜間に解析を行うといった対応を行うことでまだ件数は増やせる余地がないことはない。課題は人材。地衛研はある意味でコスト度外視でやっている“職人”のようなところもある。資格免許があってマニュアルさえ読めば誰でもできる手技というわけではない。集中力にも限度があるだろう。現在の体制の中、根性論で件数を増やそうとしても、検査の品質が担保できなくなったら本末転倒だ。

――第2波に備えるべきことは。

PCR検査については、当初と異なり民間の検査会社も利用できるようになったため、うまく使い分けることが重要だ。私が勤める自治体が自前で検査が完結する保健所設置市で小回りが利くため、すべての自治体に当てはまるわけではないが、保健所に検査を依頼するメリットはなんといってもそのスピードだ。うまくやれば当日中に結果を確認することもできる。救急病棟の個室のベッドコントールなど早期に判断する必要のある疑い患者は保健所に、術前のスクリーニングや既に入院している人は民間の検査会社に、と使い分けるのもひとつの方法だ。

また、第2波への備えという意味では、まず各医療機関は、発熱患者に門戸だけでも広げてほしいと訴えたい。PCR検査だけでは偽陽性、偽陰性の問題が残る。やはり臨床医の目で患者の状態を確認した上で、症状に応じた医療機関に紹介し、専門医師の診察やPCR検査につなげる、というのが正しい考え方だろう。胸部X線写真を1枚撮ってもらえるだけでも違う。レントゲン室の汚染が心配だという声も聞くが、撮った後のふき取りやドアを開けて十分に換気することで対応できている医療機関も多い。仮に診られないとしても安易に断るだけではなく、他の医療機関にきちんとつなげてほしい。症状があるのに診療を断られた患者さんは本当に困っている。

今回は乗り切れたが、インフルエンザの時期に重なって第2波が来るようなことになると騒動はさらに大きくなることは想像に難くない。

引用元 : 日経メディカル 第2波では医療機関は最低限、発熱患者の診療を
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