COVID-19患者の抗体価が早期に下がる可能性
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COVID-19患者の抗体価が早期に下がる可能性

中国重慶市で無症候性感染者と軽症患者のSARS-CoV-2抗体価を継続測定

中国重慶医科大学のQuan-Xin Long氏らは、重慶市でSARS-CoV-2感染が確認された無症候性感染者と軽症COVID-19患者の臨床経過と免疫学的反応を調べ、無症候性感染者の40%と軽症患者の12.9%は、退院後8週時点でIgG抗体が陰性化していたと報告した。結果はNature medicine誌電子版に2020年6月18日に掲載された。

SARS-CoV-2感染者の中に、無症状のままウイルスを排出しているサイレントスプレッダーと呼ばれる人がいることが明らかになってきた。しかし無症候性感染者の臨床特性や免疫反応については、詳しく報告されていなかった。そこで著者らは、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が確定し、重慶市万州区の政府指定病院に隔離入院された感染者で、過去14日間と入院中にCOVID-19関連症状が全く見られなかった無症候性感染者37人を同定して、免疫反応やサイトカインレベルを調べた。さらに条件をマッチさせた軽症COVID-19患者や、PCR陰性と判定されたとこれらの結果を比較することにした。

重慶市で2088人の濃厚接触者スクリーニングを実施したところ、PCR陽性だが診断時点で症状がない感染者は60人見つかった。その後隔離入院中に症状を発症した患者が23人いたため、診断前の14日間と隔離入院中を通じて症状がなかった感染者は37人となった。重慶市万州区では、2020年4月10日までに178人の感染が確定しており、無症候性感染者の割合は20.8%だった。

無症候性感染者37人の年齢は、中央値で41歳、範囲は8~75歳までで、22人が女性だった。これらの無症候性感染者と性別・年齢・併存疾患をマッチさせた軽症患者37人を選び出した。同じく条件をマッチさせたPCR陰性の非感染者も37人選び出した。

無症候性感染者37人中3人にリンパ球減少症が、1人には血小板減少症が見つかった。6人はアラニンアミノ基転移酵素(AST)が上昇しており、11人にはCRPの上昇が見られた。

入院時の胸部CTスキャンでは、11人(29.7%)にスリガラス陰影が、10(27.0%)に索状影やびまん性の浸潤影が認められが、16人(43.2%)には異常は見られなかった。また、入院から5日目に撮影されたCT画像に、スリガラス陰影または索状影が見られた患者が5人いた。明確な症状がある患者で典型的に見つかる胸水貯留、エア・ブロンコグラム、リンパ節腫脹などは認められなかった。無症候性感染者では、画像上の異常が片肺のみに認められた患者が66.7%(21人中14人)で、両側に認められた患者は33.3%(21人中7人)だった。

鼻咽頭スワブのRT-PCR検査で初めて陽性になった時点のCt値を比較したところ、無症候性感染者と軽症者の間に有意差は見られなかった。PCR陽性が持続した期間で調べたウイルス排出期間は、無症候性感染者が中央値で19日(四分位範囲15~26日)、これは軽症患者の14日(9~22日)より有意に長かった(ログランク検定のP=0.028)。ただしPCR陽性結果とウイルスの感染力は一致しているわけではないので、さらに研究する必要がある。

ウイルス曝露から3~4週間経過した時点(急性期)の、抗SARS-CoV-2 IgG抗体陽性者の割合は、無症候性感染者が81.1%、軽症患者が83.8%だった。IgM抗体陽性者の割合は、無症候性感染者が62.2%、軽症患者が78.4%だった。IgG抗体価をカットオフインデックスに相当するSample RLU/cut off(S/CO)で比較すると、無症候性感染者は中央値が3.4(四分位範囲1.6~10.7)で、軽症患者の20.5(5.8~38.2)よりも有意に低かった(P=0.005)。

回復後の早期に該当する退院後8週時点では、軽症患者の方が無症候性感染者よりも抗体価が高い傾向は継続していたが、急性期と回復初期の抗体価を比較すると、無症候性感染者の93.3%と軽症患者の96.8%で、抗体価が下がっていた。IgG抗体価の減少率は、無症候性感染者では71.1%(範囲は32.8~88.8%)、軽症患者では76.2%(10.9~96.2%)だった。

同様にPseudovirus Neutralization Assayによる中和抗体のレベルは、無症候性感染者81.1%と軽症患者の62.2%で、急性期よりも回復初期で下がっていた。中和抗体価の減少率は、無症候性感染者が中央値で8.3%(範囲は0.5~22.8%)、軽症患者では11.7%(2.3~41.1%)だった。さらに、無症候性感染者の40.0%と軽症患者の12.9%では、回復初期にIgG抗体が陰性化していた。

無症候性感染者と軽症患者で、18種類のサイトカインとケモカインのレベルを比較すると、全般的に無症候性感染者の方が血中濃度が低かった。差が大きかったのはtumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)、M-CSF、GRO-α、G-CSF、IL-6だった。また、無症候性感染者と健康な非感染者を比較すると、両群とも同じ傾向を示したが、stem cell factor、IL-13、IL-12p40、leukemia inhibitory factorは無症候性感染者の方が高かった。無症候性感染者では、サイトカインやケモカインの血中濃度が下がっており、炎症反応が抑えられている傾向を示した。

これらの結果から著者らは、無症候性感染者ではSARS-CoV-2に対する免疫反応が弱いことが示唆され、回復初期にIgGと中和抗体レベルが低下することは、予防接種戦略と血清学的調査を進める上で検討しておかねばならないと結論している。

原題は「Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections」、全文がNature medicine誌のウェブサイトで閲覧できる。

引用元 : 日経メディカル COVID-19患者の抗体価が早期に下がる可能性
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