COVID-19感染拡大予防に対するフィジカルディスタンスの有効性をグローバルな観点から統計学的に証明
(解説:桑島 巌 氏)
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COVID-19感染拡大予防に対するフィジカルディスタンスの有効性をグローバルな観点から統計学的に証明
(解説:桑島 巌 氏)

最近、WHOは“ソーシャルディスタンス”を“フィジカルディスタンス”に言い換えた。“社会的距離”では、心理面も含めた距離を含むと誤解されやすいので、単に“物理的”な接触を避けるという適切な用語の変更であろう。

そのフィジカルディスタンスが新型コロナ感染拡大を本当に予防できるのかを統計学的に分析したのがこの論文である。「そんなこと当たり前だろう」と誰もが思っていることはしばしば実は違っていたというのはままあるので、そこは科学発祥の地、英国である。武漢や香港などでの局地的な調査報告はあったが、今回はグローバルに149ヵ国でのPD政策とcovid-19抑制効果との関連をoxford covid-19 government response tracker(OxCGRT)のデータを元に統計学的に検証した成績である。

2020年1月1日から5月30日までに行われた7日以上のフィジカルディスタンス政策の感染者の拡大予防効果を、1)学校閉鎖、2)職場閉鎖、3)イベントなどの集合禁止、4)公共移動手段の閉鎖、5)都市封鎖(ロックダウン)の5つに分けて分析した。

その結果、これらの政策は全体として、13%の統計学的に有意な感染予防に結び付いたという。これらの5項目中4項目以上が実施された国では有意な予防効果が得られたが、3項目以下では予防効果はなかった。

最初の感染者報告から政策実施までの日数と感染者数減少には関連がみられなかったという。さらに分析すると“国民1人当たりのGDPが高い国”、“65歳以上の高齢者が多い国”、“医療保険が整備されている国”ほど効果が大きかったという。全体として13%の感染抑制という数字はかなり少ないが、わが国ではこの3要件とも満たしていることから予防効果はさらに大きいと思われる。

13%という数字はあくまでも国家施策との関連をみたものであり、どの程度国民が政策を遵守したかという国民性や法的罰則の有無といった各国の事情は考慮されていない点にも注意が必要である。

5つの組み合わせのうち、学校閉鎖、職場閉鎖、集合禁止、ロックダウンの4項目が行われていれば、公共移動手段の閉鎖は、それ以上の予防効果は見いだせなかったという。

先日、尾身会長が、「3密が守られていれば旅行は問題ない」との見解を示したが、この論文を読んだからかもしれない。ただし、集合禁止や都市封鎖が実施されていれば当然移動も制限がかかっている可能性があり、統計上、移動制限によるさらなる有意な抑制効果が現れなかったのかもしれない。

いずれにしろ感染拡散防止の観点からみればフィジカルディスタンスの重要性はこの論文が示すとおりであるが、反面、経済活動が大きく停滞するという一面もあり、難しいところである。

引用元 : Care Net COVID-19感染拡大予防に対するフィジカルディスタンスの有効性をグローバルな観点から統計学的に証明
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