抗体検査、誤解相次ぐ 「現在の感染」はわからない
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抗体検査、誤解相次ぐ 「現在の感染」はわからない

新型コロナウイルスの「抗体検査」で陰性となったことを、現在感染していないことを示すと間違って解釈する例が相次いでいる。抗体検査で分かるのは過去に感染していたかどうかで、現在の感染の有無を知るためのPCR検査などとは用途が異なる。複数ある検査法について、それぞれの特徴を正しく知ることが大切だ。行政なども一般向けに丁寧な説明をすることが求められる。

東京都新宿区の劇場で6月30日~7月5日まで公演した舞台の出演者らが新型コロナに集団感染していることが判明した。これまで感染が分かったのは50人を超える。観客ら800人以上が濃厚接触者となった。主催者側の発表によれば、出演者1人から体調不良などの申告があったが「抗体検査の実施の結果、陰性であった」ことなどから出演したという。

大阪市の松井一郎市長は14日、国が国内旅行の代金を補助する「Go To トラベル」事業について、利用者が抗体検査を受ける仕組みを作る考えを示した。陰性が確認できれば旅行を促す。専門家にも意見を聞き、抗体検査の有効性が判断できれば早期に始める方針という。

こうした事例に対し、日本臨床検査医学会で新型コロナ対策を担当する柳原克紀・長崎大学教授は「抗体検査では現在感染しているかどうかを判断できない」と話す。地域でどれだけ感染が広がっているかなどの調査には使えるが、個人が単独で使っても有益な情報は得にくい。

抗体とは体内に侵入した病原体を捉えるために働く物質のことだ。感染してから体内で作られ、発症して2週間ほどたつと量が増える。その後一定期間は増えたままなので、検査で陽性と判定されれば、これまでに感染したことがあると分かる。発症から1週間程度では量が増えていないため、陽性にはなりにくい。

国立感染症研究所が4月に実施した試験では、発症から5日後までの患者のうち、抗体検査で陽性となった人は7%にとどまった。9割以上の患者が陽性となったのは発症から12日以上たってからだった。

これまでの研究から、感染者が別の人にウイルスを感染させる力は発症した頃が高いとされる。この時期は抗体検査では陽性になりにくく、陰性となって安心して感染防止策を怠れば、他人に感染させかねない。

現在感染しているかどうかが判断できるのはPCR検査や抗原検査だ。PCR検査は比較的精度が高く、抗原検査は簡便なことが利点だ。しかし万能ではない。こうした検査でも感染しているのに陰性となるケースがあるからだ。検体を採取して検査するまでにウイルスが壊れるなどするのが原因という。

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、PCR検査では感染者の約3割が陰性と判定されるとしている。柳原教授は「PCR検査で陰性になっても、感染していると思って行動することが重要だ」と話す。

PCR検査などでは、逆に感染していないのに陽性となるケースもある。検体にウイルスが混ざったり、ウイルス量を示す指標となる物質がウイルス以外の要因で生まれたりするのが原因だ。柳原教授は「感染していないのに陽性となった可能性が疑われる場合は、再検査すれば見分けられると考える」と話している。

引用元 : 日本経済新聞 抗体検査、誤解相次ぐ 「現在の感染」はわからない
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