COVID-19の疲労症候群~
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群研究のまたとない機会
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COVID-19の疲労症候群~
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群研究のまたとない機会

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ウイルス感染が去ってすぐの疲労感は珍しいことではなく、たいていすぐに消失しますが、長引く疲労を特徴とする筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)に時に陥る恐れがあります。

かつて単に慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれていたME/CFSは運動や頭を使った後に疲労が悪化することを特徴とし、軽く歩いただけ、または質問に答えただけで何日も、悪くすると何週間も起き上がれなくなることがあります1)。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を経た患者の長患いも最近明らかになっており、COVID-19を経た640人へのアンケートでは多くが胸痛や胃腸不調、認知障害や酷い疲労が収まらないと回答しました2)。

米国国立アレルギー感染病研究所(NIAID)を率いるAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もCOVID-19一段落後のそういった症状を認識しており、長きにわたる疲労症候群がCOVID-19に伴う場合があり、その症状はME/CFSに似ているとの見解を今月初めのAIDS学会での記者会見で表明しています3)。

ME/CFSは謎に包まれており、それ故に偏見を通り越して無きものとする医師や研究者も少なくありません。ウイルス感染や神経疾患などの何らかの診断を試みた上でどこも悪くないとし、挙げ句にはもっと運動することを勧める医師もいるほどです。運動はME/CFSを悪化させる恐れがあります1)。

無きものとして長くみなされていたため患者の多くは病因と思しき脳や脊髄の炎症の関与を見て取れる病名・筋痛性脳脊髄炎(ME)と呼ばれることを好みます。

しかしながら脳脊髄炎の裏付けといえば脳の炎症マーカー上昇や脊髄液のサイトカイン変化を報告している日本での被験者20人ほどの試験4)ぐらいであり、米国疾病管理センター(CDC)を含む研究団体のほとんどはME/CFSと呼ぶようになっています。

ME/CFSの原因は謎ですが、感染症との関連が示唆されており、米国・英国・ノルウェーでの調査によるとME/CFS患者の75%近くがその発症前にウイルス感染症を患っていました5)。また、西ナイルウイルス(WNV)、エボラウイルス(EBV)、エプスタインバーウイルス(EBV)等の特定の病原体とME/CFS様症状発現の関連が相当数の患者で認められています。

2003年に蔓延したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVの感染患者の退院から1年後を調べた試験6)では、実に6割が疲労を訴え、4割以上(44%)が睡眠困難に陥っており、6人に1人(17%)は長引く不調で仕事に復帰できていませんでした。

そういった試験結果を鑑みるに、SARS-CoV-2感染患者の体の不具合が収まらずに続く場合があることはほとんど疑いの余地がないとME/CFS研究連携を率いるモントリオール大学のAlain Moreau氏は言っており、同氏や他の研究者の関心は今やSARS-CoV-2がME/CFSを引き起こすかどうかではなく、どう誘発しうるのかに移っています。

いくつか想定されている誘発の仕組みの中で自己免疫反応の寄与を米国NIHの神経ウイルス学者Avindra Nath氏はとくに有力視しています。最近イタリアの医師は重度のSARS-CoV-2感染症(COVID-19)患者に自己免疫様症状・ギランバレー症候群(GBS)が認められたことを報告しており7)、ME/CFS患者を調べた2015年報告の試験8)では自律神経系受容体への自己抗体上昇が認められています。

もしCOVID-19が自己免疫疾患を招きうるなら何らかのタンパク質へのT細胞やその他の免疫の担い手の反応が血液中に現れるはずです。そこでエール大学の免疫学者岩崎 明子氏等はCOVID-19入院患者数百人の血液検体を採取し、すぐに元気になった場合とそうでない場合の免疫特徴を比較する試験を開始しています。

Moreau氏とNath氏等もCOVID-19患者を長く追跡してME/CFSの原因を探る試験9)を始めており、それらの試験結果はCOVID-19を経た人のみならず世界中のME/CFS患者のためにもなるはずです。

研究所や政府はCOVID-19患者がME/CFSに陥りうることに目を向け、資源や人を配して事に当たるべきであり、さもないとME/CFSの謎の解明のまたとない機会がふいになってしまうとNath氏は言っています1)。

引用元 : Care Net COVID-19の疲労症候群~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群研究のまたとない機会
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