情報錯綜して二転三転の隔離生活が終わった
続・COVID-19状況下での一家4人「渡中」の記録
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情報錯綜して二転三転の隔離生活が終わった
続・COVID-19状況下での一家4人「渡中」の記録

2020年3月下旬、COVID-19の影響が深刻化してきて、あわてて帰省中の日本から上海へ戻ろうとしたところ、地方都市・福州市のホテルで隔離されるはめになった友成暁子です。前回は私たち家族が隔離されるまで、そして隔離生活が始まったばかりの段階のお話をさせてもらいました。今回は隔離生活中盤に起こった出来事、そして上海へ戻るまでの顛末をお伝えしたいと思います。

23時半、ホテルの部屋に想定外の電話…

ホテルに閉じ込められてからしばらくは比較的平穏に過ごしていたのですが、隔離生活3日目、23時半に部屋の電話が鳴りました。そして電話口で「これから5分後に医師が検査をしに行くので、ドアのノック音が聞こえたらマスクをして出てくること」と伝えられました。かなり遅い時間だったので子どもはもちろん寝ていますし、なにしろ突然の連絡であり、予定されていた検査ではないのだろうと感じました。「これはもしかして、わが家の誰かが空港で採取したPCRスワブ陽性になったのか? 病院に連れて行かれるのか?」と、居ても立ってもいられなくなりました。

ここまで私が不安になったのは、PCR陽性になったらどんな境遇に置かれるかを知っていたからです。中国へ戻る前、私は友人やSNSを通して様々な情報を可能な限り集めていました。そのときに「PCR陽性になった人の体験談」を読んでいたため、余計心配になってしまったのです。

空港でのスワブで陽性となったら、原則として病院へ連れて行かれ、有無を言わさず入院となります。入院時に胸部CTを1回、入院中はPCRと胸部X線撮影を14日間で3回行われ、すべて陰性になっていれば退院です。

私はこの時点で、海外から上海へ入ろうとした外国人家族のうち「子どもだけPCR陽性」になってしまったパターンを2例知っていました。このパターンになってしまった場合、子ども(PCR陽性者)のみが病院へ連れて行かれます。ポイントは「のみ」の部分です。親は同行できず、濃厚接触者としてホテル隔離のままとなります。子どもと引き離され、会えなくなってしまうのです。

この2例の家族では、それぞれきょうだい2人が陽性となりました。きょうだいは同じ病室に入れてもらえたようなのでまだよかったですが、親としては気が気ではないでしょう。ましてや、入院させられるのは公立病院。この連載で以前書いたように、外国人は公立病院に足を踏み入れたことがない人がほとんどなので、子どもがどんな環境でどんなことをされているのか分からないのは、親としては本当に「恐怖体験」だったと聞きました。

14日間の半ばで突然の隔離解除?

0時20分ごろ、私たちの階の廊下が騒がしくなり、検査が始まった様子が聞こえてきました。この時点までは、うちの家族のみが検査対象なのか、それとも全員対象なのか分かっていなかったため、他の部屋でも検査が行われていることを知り、少し安心しました。

再度スワブをするのか思っていましたが、このときは指先穿刺で採血されたので、おそらくイムノクロマトグラフィー法を用いたIgMまたはIgG検査をされたのでしょう。検査はすぐに終わりましたが、その夜はなかなか寝付けませんでした。検査結果は伝えてくれないのですが、とりあえずわが家は誰も病院に連行されることなく、翌日、翌々日と過ぎていきました。

そして隔離生活6日目、突然、再度の咽頭スワブを採取されました。目的を告げられないままの異常なほどの頻回な検査でまたも不安になっていた矢先、部屋に電話がかかってきて「明日帰れるから、よろしく」くらいの軽いノリで上海へ戻っていいという旨を伝えられました。当初、ホテルの玄関口で医師からはっきりと「14日間の隔離」と伝えられていたので、まさに晴天の霹靂でした。

ただし、隔離解除の条件として、次のことを提示されました。第一に、ホテルを出るまでに家族それぞれが3回ずつPCRを受け、その検査費用(1人当たり9000円)を自腹で支払うこと。第二に、翌日18時以降の出発で上海までの交通手段を自ら手配すること。

いったんは喜んだものの、やはり不安が襲ってきました。まずは「上海へ戻った後、再び14日間のホテル隔離になるのでは?」という点。これまでの隔離期間がリセットされるのは精神的にきつすぎますし、上海でのホテル費用も嵩みます。また、「飛行機や電車に乗せてもらえるのか?」という点。原則として、海外からの帰国者は14日間は公共の場に出られないはずなので、拒否されてもおかしくありません。福州市の現地担当者からは「上海へ戻ってからは7日間の追加の隔離をして終わりだよ」と言われましたが、そのようなパターンは聞いたことがありませんでした。

ここから上海市政府と日本国領事館への電話での問い合わせ、そしてSNSでの怒涛の情報収集を始めました。上海市からは「そのような話は聞いたことがない。上海に戻ってから14日間の隔離になる可能性が高いが、上海市衛生局の担当者に聞いてみる」と伝えられました。SNSでも「そのようなパターンは聞いたことがない! 14日間やり直しになる、に一票! 気を付けろ!」という意見が大勢でした。

日本国領事館は、閉館時刻以降に問い合わせをしたにもかかわらず、非常に迅速に動いてくださいました。福州市衛生局に連絡をしてくださったり、上海日本国領事館(私たちの住所地を管轄)と広州日本国領事館(福州市を管轄)で連携を図ってくださったり…。このときは心から領事館の方々へ感謝の念がわき起こり、日本国民であることのありがたみを感じました。

こうして上海市衛生局や日本国領事館からの返事を待っている間、突然、携帯電話に福州市の現地担当者からメッセージが入りました。「公衆への安全を考慮し、当ホテルで14日間の隔離を完了してから隔離解除とすることになりました。明日の隔離解除は中止です。飛行機などはキャンセルしてください」。

「えーっ!」というのが、まずもっての感想でした。おそらく私たちが問い合わせをしたどこかの機関からの「指導」により隔離解除が覆ったのだと思いますが、はっきりとしたことは最後まで分かりませんでした。一市民の問い合わせで方針が変わることは通常はあり得ませんが、「どこかの誰かが偉い人に怒られた」という理由で方針が変わることは、こちらではしばしばあることです。

とにもかくにも、振り回されはしましたが、隔離生活を14日間のみで終えられそうなことにはホッとしました。その後も、なぜかPCRを追加で5回行われた以外は、平穏無事に過ごすことができました(このときのPCRの結果を教えてもらえないか何度かお願いしてみましたが、最後までNGでした)。

ただいま、上海

いよいよ14日目の隔離解除の日──。ホテルのフロントへ行き、隔離解除証明書を受け取りました。この紙をもらうために14日間頑張ったとも言える、汗と涙の結晶です。

空港のチェックインカウンターでは、隔離解除証明書と「健康QRコード」の提示が必要でした。QRコードを携帯電話などでスキャンすると、その画面上に過去14日間に滞在していた場所が自動的に表示されるシステムです。加えて、高リスク国となっている海外からの帰国者や、国内でもハイリスクとされている場所に14日以内に滞在した記録がある人は「赤」、そのような地域での滞在歴なし、あるいは滞在から14日以上経過している人は「緑」のマークが表示されます。ハイリスクとされていない日本から来た私たちは最初から「緑」でしたが、チェックインカウンターやゲートを通るたびに「健康QRコード」を提示するよう言われました。

国際線と違って国内線の飛行機は、間隔を空けて座ることを要求されていないようで、ほぼ満席の状態でした。「食べたり飲んだりするとき以外はマスクを外さないように」と、たびたびアナウンスがありました。2歳の息子も14日間の隔離生活でマスクを着けることを学び、先のフライト時とは別人のようにおとなしくマスクを着けていてくれました。

上海に降りた後は、バゲージ回収の直前に特別カウンターが設置されており、今度は上海市の「健康QRコード」を申請するように伝えられました。全国版のものとローカル(市ごと)のもの、異なるシステムがあるようで、上海ではローカルのものを使うことの方が多かったです。

この特別カウンターでは最後に、ある番号に電話をかけるように指示されました。言われた通りにすると、保安官の目の前の携帯電話が鳴り、そこに私たちの電話番号が表示されました。これは、今後の追跡で連絡が必要になったときのために、虚偽の番号を申告していないか確認する意味があったようです。

空港の外に出ると、そこには「いつも通りの風景」が広がっていました。最後の最後まで本当に上海で追加の隔離を要求されないかドキドキしていた私たちは、ここで本当の意味でホッとできました。帰りの車中からは所々で注意喚起を呼びかける横断幕を見かけましたが、それ以外は特に大きく変わったところはありませんでした。とはいえ、上海は「日常」に戻る努力をしている最中です。政策面でも様々な制限を緩める方向になってきていますが、まだ本来の姿ではありません。次回は、上海に戻ってからの街の様子、生活の状況についてお届けしたいと思います。

引用元 : 日経メディカル 情報錯綜して二転三転の隔離生活が終わった
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