COVID-19対策に塩基配列の迅速検査が役立つ
疫学情報と組み合わせてSARS-CoV-2感染経路の追跡が容易になる
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COVID-19対策に塩基配列の迅速検査が役立つ
疫学情報と組み合わせてSARS-CoV-2感染経路の追跡が容易になる

英国Cambridge大学のLuke W Meredith氏らは、PCR検査でCOVID-19と診断された患者のウイルスゲノムの塩基配列を迅速に検査し、入院患者と医療従事者、市中感染のウイルスの塩基配列を比較して、疫学情報と組み合わせることにより、35クラスターを特定した。この手法は感染ルートの究明と院内感染対策として有効だと報告した。結果はLancet Infectious Disease誌電子版に2020年7月14日に掲載された。

医療施設内の感染は患者と医療従事者の両方に起こり得るが、早期に発見し拡大を阻止することが極めて重要だ。SARS-CoV-2のようなRNAウイルスは、時間経過と共に変異を蓄積していくため、ゲノム配列の多様化が進行する。現在の変異の速度は、おおよそ1カ月に2.5ヌクレオチドと推定されている。そこで著者らは、SARS-CoV-2迅速シーケンシングと詳細な疫学的分析を組み合わせて、SARS-CoV-2の院内感染について研究し、予防法の構築に役立つ情報を得ようと考えて、前向きのサーベイランスを行った。

対象は、Cambridge大学病院のCOVID-19患者と感染した医療従事者、および英国東部の18病院を受診したCOVID-19患者。ナノポアシーケンシング法を用いて、標本採取から24時間以内に塩基配列情報を入手できるようにした。患者の人口統計学的データと臨床データ、検査値などは病院の医療記録から入手した。

2020年3月13日から2020年4月24日までに、5613人がPCR検査を受けて陽性と判定された。このうち1000標本をCambridge大学病院でシーケンシングを行い、高品質なデータが得られた747標本を分析の対象にした。このうち37標本がスクリーニングで見つかった医療従事者、262標本がCambridge大学病院の患者、448標本が他の病院の患者のものだった。

SARS-CoV-2がヒトに感染してから6カ月程度しか経過していないために、同大学病院由来の2つの標本を比較しても、ヌクレオチドの違いは中央値8個しかなかったため、クラスターの同定は難しかった。ゆえに、疫学的な情報を組み合わせて、感染経路の探索を行った。Cambridge大学病院の299人に由来する塩基配列と疫学データを組み合わせて検討したところ、159人からなる35のクラスターが同定された。最大のクラスターは、塩基配列が同一の18標本(18人に由来する)からなっていた。

クラスターに含まれていた159人中92人(58%)には、数日以内または数週間以内にクラスター内の他者から感染したことを示唆する疫学的に強い関係が認められ、32人(20%)には中間的な強さの関係が見られた。一方で、35人(22%)には疫学的には結びつきが認められなかった。関係が強力だった92人の中には、別の感染者の濃厚接触者であることが既に判明していた人と、他の感染者との関係性が認識されていなかった人々が含まれていた。また、医療従事者の感染は、病院内と市中の両方で発生していたことを示した。

分析時点で、Cambridge大学病院の12の病棟のうち、9病棟ではCOVID-19患者が発生しておらず、3病棟と外来透析患者ユニットでクラスターが発生していた。クラスター1のA病棟は、6人の手術患者がCOVID-19と診断された。そのため新規患者の入院を中止し、その領域に立ち入ったすべての患者に対するサーベイランスを強化した。

透析ユニットでは、6人の腎不全患者がCOVID-19と診断された。6人の塩基配列は同一で同じ週の同じ日に透析を受けていることが分かったため、市中で感染した患者が透析ユニットで感染を広げたと考えられた。

これらの結果から著者らは、SARS-CoV-2のリアルタイムゲノムサーベイランスは、塩基配列と疫学情報を組み合わせることで、医療施設関連感染の調査に役立つことが分かった。このアプローチは、隠れた伝播を検出し、標的を定めた感染予防介入を実施する機会をもたらすことから、公衆衛生施策にも重要な示唆を与えるだろうと結論している。この研究は英国Department of Health and Social Careなどの支援を受けている。

原題は「Rapid implementation of SARS-CoV-2 sequencing to investigate cases of health-care associated COVID-19: a prospective genomic surveillance study」、概要はLancet誌のウェブサイトで閲覧できる。

引用元 : 日経メディカル COVID-19対策に塩基配列の迅速検査が役立つ
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