口腔ケアで新型コロナ重症化を予防
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口腔ケアで新型コロナ重症化を予防

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、受容体であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2に結合し感染することが分かっている。大阪大学大学院高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教授の阪井丘芳氏は「ACE2は唾液腺にも発現しており、口腔ケアが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐために有効だ」と主張する。2020年度第2回日本抗加齢医学会 WEBメディアセミナー(8月5日)で、口腔ケアの重要性と、自身が開発に関わるSARS-CoV-2に効果的な口腔ケア用品について解説した。

口腔環境がCOVID-19重症化に関与

ACE2は消化管や腎臓、心臓などに多く発現している。COVID-19では肺炎が問題視されるが、ACE2は消化管などに比べ肺での発現量は少なく、肺よりもむしろ唾液腺でやや多く認められる。阪井氏は「口腔・咽頭粘膜はSARS-CoV-2の侵入経路となり、唾液腺はその貯留庫になる可能性が高い」と言う。

また、SARS-CoV-2に感染しても無症状や軽症の場合があることから、同氏はウイルスの毒性はあまり強くない可能性も指摘する。それでも重度の肺炎発症例が存在する背景には、SARS-CoV-2が肺に移行しウイルス性肺炎を引き起こす他、肺の上皮細胞がSARS-CoV-2により損傷して防御機構が弱まり、誤嚥した口腔細菌によって二次的に細菌性肺炎が生じることが関連していると推論する。

既に、口腔細菌は歯周病や齲蝕があると肺に移行しやすいことが知られており、2年間口腔ケアを実施した要介護の高齢者では、実施していない者に比べ誤嚥性肺炎の発症率が10%ほど低下するという報告もある。唾液腺がSARS-CoV-2の貯蔵庫になる事態を防ぐ観点からも、二次的細菌性肺炎を防ぐ観点からも、口腔衛生管理の徹底が重要となる。

しかし高齢者では、食事を経口摂取していなくても剝離上皮や喀痰などにより口腔内が汚染されているケースが少なくない。これらは塊状となって気道閉塞を引き起こすこともあり、同大学の関連施設では看護師あるいは歯科衛生士がスポンジブラシと生理食塩水や塩化ベンザルコニウム液などを用いて除去していたが、出血リスクや飛沫の飛散リスクがあった。

SARS-CoV-2に効果的かつ安全性の高い「MA-T」を開発

そうした背景から、阪井氏は除菌・消臭作用のある要時生成型亜塩素酸イオン水溶液「Matching Transformation system(MA-T)」を開発したエースネット社と共同で、医療従事者の安全性および効率性を高め、患者負担が少なくなるような口腔ケア用品の開発に着手した。MA-Tは触媒技術により二酸化塩素を改良した成分で、標的となるウイルスや細菌が存在する場面において、水中から二酸化塩素成分を必要量だけ生成する作用を持つ。100ppm(0.01%)の濃度で、次亜塩素酸水300ppmと同程度の除菌効果を有し、既に多くの航空機やホテルで導入されている他、洗口液などの成分としても利用され、高い評価を得ているという。

同氏がMA-Tをジェル化して口腔ケアが必要な患者に使用したところ、喀痰などがより容易に除去できたという。さらに、同大学の共同研究チームが行った試験では、100ppmのMA-Tに1分間SARS-CoV-2を接触させると98%が不活化した。

同氏は現在、アース製薬とエースネット社、大阪大学の共同でジェル化したMA-Tの商品化を目指している。MA-Tを使用するメリットとして①口腔内の喀痰や血餅、汚れを溶かしやすいため、医療従事者が安全かつ迅速に口腔ケアを実施できる②患者が誤嚥しにくく、苦痛が少ない③インフルエンザウイルスやノロウイルス、カンジダ菌、齲蝕菌、歯周病菌、B型/C型肝炎ウイルスなどに対しても有効性が期待できる―とし、「極めて効果的な口腔ケア用品になるだろう」と期待を寄せた。

引用元 : Medical Tribune 口腔ケアで新型コロナ重症化を予防
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