医師・経済学者らが共同でコロナ禍の医療と経済について提言
新型コロナウイルス最新情報

医師・経済学者らが共同でコロナ禍の医療と経済について提言

コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会は9月25日、記者会見を開き、「医療提供体制の崩壊を防止し、経済社会活動への影響を最小化するための6つの緊急提言」を発表した。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止と経済社会活動の両立を目指してまとめられたもの。

同研究会は、元東京大学総長の小宮山宏氏が座長を務め、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の小林慶一郎氏や一橋大学国際・公共政策大学院教授の井伊雅子氏らを中心に、経済学者、工学者、知事、医療コンサルタント、政策経験者、医師といったさまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まって立ち上げられた。

提言は以下の6項目から成る。

・提言1:医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進

・提言2:診療所などの力を生かし、病院・保健所の負担を軽減し、検査を迅速化

・提言3:メリハリのある財政支援によりCOVID-19に対応する医療提供体制を強化

・提言4:検査体制を増強し、迅速な検査実施を実現

・提言5:高リスク者を重点的に防御

・提言6:リスクを踏まえた合理的な行動抑制を進め、偏見・社会的非難を解消

医療資源を最大限効率的に活用するため、重症者対応可能な医療機関を2次医療圏に1カ所以上確保し、そこに集中治療を行える人材を集約するとともに、中等症者対応に当たる周辺の医療機関との連携を確立。COVID-19患者を受け入れられない医療機関は、COVID-19診療を行う医療機関への人材派遣などを行う。COVID-19対策に寄与する医療機関に対して貢献度に応じた財政支援を行い、これらの施策をスムーズに進めていくことなどが盛り込まれている。

また、診療所、小規模病院の医師やその他スタッフを活用し、保健所に依存しない検査体制構築も提案する。検査の必要性の見極めから検体採取、入院判断まではそれらの施設で行うことで、診断の迅速化を目指す。

一方で、「無症状者も含めた徹底的なPCR検査」はうたわない。国の新型インフルエンザ等対策有識者会議の下に設けられた「基本的対処方針等諮問委員会」などでも、「日本のPCR検査数は少ない。もっと増やすべき」という主張が繰り返されていた。今回の提言書作成にかかわった多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹氏は、「当委員会でも、当初は無症状かつ非濃厚接触者を含めたPCR検査の徹底的な拡充を訴える声はあった。しかし、PCR検査は感度が高くないため、『結果が陰性だからといって安心できるわけではない』という正しい理解が一般まで広く浸透していない。現状のままPCR検査の徹底拡充を進めると、現場の混乱や感染拡大へとつながりかねないことなどをしっかり伝えていくことで、必要以上のPCR検査拡充は不要だという理解を得ることができた」と振り返る。

宿泊療養施設に収容された無症状・軽症の感染者の診療や、高齢者、基礎疾患保持者といった重症化リスクの高い患者をCOVID-19から守るためオンライン・電話診療を活用した体調確認および感染時の対応も診療所などの医師が担うことも提言されている。「今春の流行時には、個人防護具(PPE)不足などもあり、診療所や小規模病院の医師たちがCOVID-19診療にどう関わってくべきか、悩ましい側面があった。しかし、プライマリ・ケアに携わる医師の中にも、COVID-19診療に貢献したいと思う医師は多い。流行が少し落ち着きPPE不足も解消しつつある今、本提言では診療所などの医師が無理なく、担える役割を果たしていくための方法を提案している。医師自身が高齢だったり持病がある、ビル診療所などで動線分離ができないといった理由で発熱患者を受け入れられない施設もあるだろう。そういった事情があっても、発熱患者に電話で対応し、受診先を紹介する、病院を受診している慢性疾患患者の逆紹介を受けることで病院の負担を軽減するなど、できることはある」と、自身も診療所経営者である大橋氏は語る。

経済社会活動については、「感染拡大防止の必要性が生じた場合には、緊急事態宣言前の3月下旬の自粛水準で対応」「感染発生時における事業・教育活動停止、自宅待機範囲の具体的指針策定」「感染発生の個別発表は原則的に廃止」など、過剰自粛を回避するための提案が目立った。さらに、感染者、医療従事者やその家族への偏見や差別をなくすため、「行政や医療従事者によるCOVID-19に関する積極的な情報発信」「匿名性を守る」「SNS上での誹謗中傷に対する法的措置」などについて記載されている。

大橋氏は「医療者の中には、今回の提言について異論のある方もいると思う。しかし、異分野の専門家が議論を重ね、合意形成に至ったことが、本提言の意義の1つだと感じている。我々の研究会以外にも、異業種同士の話し合いの場が設けられ、ウィズコロナ時代の医療や経済について検討してほしい。本提言がそのきっかけになれば」と期待を示す。また、同研究会について、「今後、公衆衛生の専門家にもメンバーに加わってもらい、さらなる議論を交わしていきたい」と展望を語った。

引用元 : 日経メディカル 医師・経済学者らが共同でコロナ禍の医療と経済について提言
お申し込みはこちら