RAS阻害薬がコロナ重症化を抑制か
日本発・多施設共同後ろ向きコホート研究
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RAS阻害薬がコロナ重症化を抑制か
日本発・多施設共同後ろ向きコホート研究

ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の服用が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の転帰に及ぼす影響については、さまざまな見解が示されてきた。横浜市立大学市民総合医療センター心臓血管センター講師の松澤泰志氏、同大学循環器・腎臓・高血圧内科学主任教授の田村功一氏らの共同研究グループは、COVID-19の転帰に影響を及ぼす因子について検討する目的で、日本で初となる多施設共同後ろ向きコホート研究Kanagawa RASI COVID-19研究を実施。その結果、65歳以上の高齢であることがCOVID-19の重症化および予後不良と関連すること、罹患前にRAS阻害薬を服用していた高血圧症を併存するCOVID-19患者では、意識障害が少ないことが明らかになったと、Hypertens Res(2020年8月21日オンライン版)に発表した。

COVID-19入院患者151例で検討

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)2を受容体として細胞に侵入する。そのため、COVID-19とRASとの関連が注目されている。

SARS-CoV-2への感染によりACE2の発現が低下すると、アンジオテンシンⅡが増加して活性が亢進。サイトカインストームを引き起こし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)へと進展することが示唆されている。

アンジオテンシンⅡを抑えるRAS阻害薬は、COVID-19患者においてサイトカインストームによる重症化を抑制する可能性が指摘されている。その一方で、RAS阻害薬の服用とCOVID-19の重症化抑制との間に関連性はないとの報告もあり、結論に一貫性はない。

そこで田村氏らは今回、Kanagawa RASI COVID-19研究を実施。COVID-19の転帰に影響を及ぼす因子について検討した。こうした研究が日本で行われるのは初めてである。

解析対象は、今年(2020年)2月1日~5月1日に、神奈川県内の医療機関6施設に入院したCOVID-19患者151例(平均年齢60±19歳)。主要評価項目は、院内死亡、体外式膜型人工肺(ECMO)使用、人工呼吸器使用、集中治療室(ICU)入室の複合で、副次評価項目は、酸素療法、COVID-19に関連する意識障害、収縮期血圧90mmHg以下、CT検査での肺炎像とした。さらに、酸素療法を要する重症肺炎についても評価した。

65歳以上が重症化と関連

多変量解析を行ったところ、高齢(65歳以上)であることが複合主要評価項目と有意に関連していた〔オッズ比(OR)6.63、95%CI 2.28~22.78、P<0.001〕。

次に、酸素療法を要する重症肺炎との関連について解析した。その結果、重症肺炎の有意な関連因子として、単変量解析では高齢(65歳以上:OR 6.65、95%CI 3.18~14.76、P<0.001)、心血管疾患の既往(同5.25、1.16~36.71、P<0.031)、糖尿病の併存(同3.92、1.74~9.27、P<0.001)、高血圧症の併存(同3.16、1.50~6.82、P=0.002)が抽出された。一方、多変量解析では、高齢(65歳以上)のみが有意な関連因子であった(同5.82、2.51~14.30、P<0.001)。

RAS阻害薬服用者の意識障害は低頻度

さらに、高血圧併存患者に限定して解析した。すると、RAS阻害薬による降圧治療を受けていたCOVID-19患者では、受けていなかった患者に比べて複合主要評価項目(14.3% vs. 27.8%)および院内死亡(9.5% vs. 16.7%)、人工呼吸器使用(9.5% vs. 16.7%)、ICU入室(9.5% vs. 22.2%)の頻度が低い傾向が示された。副次評価項目に関しては、COVID-19に関連する意識障害の頻度が有意に低値だった(4.8% vs. 27.8%、P=0.047)。

以上から、田村氏らは「RAS阻害薬がCOVID-19の重症化を予防する可能性が示唆された」と結論。「さらに大規模な集団での検討によりRAS阻害薬の有効性が証明できれば、COVID-19の重症化予防や治療効果の向上に貢献できるだろう」と期待を示している。

引用元 : Medical Tribune RAS阻害薬がコロナ重症化を抑制か
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