「コロナの弱毒化」は否定できない!?
科学的根拠の欠如が招いた医療危機、コロナ差別、経済損失
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「コロナの弱毒化」は否定できない!?
科学的根拠の欠如が招いた医療危機、コロナ差別、経済損失

厚労省専門家会合で「致死率は大差ない」

安倍晋三総理の「遺言」によって、漫然と続けられていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「指定感染症(2類相当といいながら実は1類相当)」の見直しに、やっと政府、厚生労働省も重い腰を上げそうな気配が出てきた。

もちろん、今後も政府や自治体が国民に対して、3密の回避や移動の自粛などを求めるメッセージを発信し続けることは必要である。急激な感染者数の増加によって、高齢者や基礎疾患のある人に健康被害を拡大させることは避けねばならない。しかしながら、こうした措置は公正で科学的根拠に基づいたものでなければならない。いたずらに国民の不安を煽って、医療崩壊を誘導してはならない。

今後のCOVID-19政策に関して「第二波新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の弱毒化の有無」が議論されてきた。国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターは、SARS-CoV-2のゲノム情報を基にしたハプロタイプのネットワーク解析によって、現在国内で流行しているウイルス株は欧州型ウイルス株から変異した、第一波とは異なるタイプのウイルスであることを明らかにしている。

ところが、同じ国立感染症研究所の感染症疫学センター長の鈴木基氏は、8月24日の厚労省専門家会合において「第一波と第二波の間で致死率は大差ない」という見解を示し、政府対策分科会に資料として提示している。

川口計算では70歳以上の致死率は第一波22.3%、第二波5.0%

鈴木氏が提示している「第一波と第二波の患者特性の比較」(政府対策分科会資料の13ページ)を検証してみる。

累計で単純に致死率(死亡者数÷感染者数)を計算すると、
第一波(1月16日~5月31日):900÷16,784=5.4%
第二波(6月1日~8月19日):219÷41,472=0.5%
と大差がある。

ところが、資料の脚注に「致死率は発症から死亡までの期間を調整して算出したものであり、累積死亡者数を累積感染者数で除した値とは異なることに注意。値は各期間の観察終了直前7日間の平均値」として、
「5月25~5月31日: 6.0%」vs.「8月13~8月19日: 4.7%」
と計算している。しかしながら、この計算の出典・根拠は示されていない。そもそも、観察終了直前7日間である「5月25~5月31日」には第一波は既にピークアウトしており、一方「8月13~8月19日」は第二波のピークの最中である。比較対象が適切だとは到底思えない。

また、この第二波の致死率4.7%という数字はにわかには信じ難い。上記の「脚注」に従って、「死亡までの期間を調整」して、発症から死亡までの期間を1カ月と考えても、
6月1日〜7月19日の感染者数8,276人
6月1日〜8月19日の死亡者数219人
であり、2.6%(219÷8,276)と計算される。4.7%などという高値にはなりえない(計算に当たって一部、東洋経済ONLINE掲載のデータを参照)。

さらに、期間累計での70歳以上の致死率を、上記の鈴木氏のデータから算出すると表のようになり、第一波22.3%、第二波5.0%と大差が付く。

これが、鈴木氏が「発症から死亡までの期間を調整して、観察終了直前7日間」だけ取り出すと、なぜか「70歳以上の致死率は、第一波25.1%、第二波25.9%」と5倍以上の数字に跳ね上がって、「70歳以上の致死率は、第一波と第二波でほとんど変わらない」という結論になっている。そして、この根拠不明のデータが厚労省専門家会合の見解として、8月24日にメディアを通じて国民に情報発信されている。

10日後の専門家会合で一転、「致死率は大きく下がっていた」

ところが、その10日後の9月3日には、同じ厚労省専門家会合が、国立感染症研究所が致死率を「あらためて調整」した結果として、「5月末までの1カ月間の致死率は全体で7.2%、70歳以上で25.5%だったのに対して、現在の流行では8月の1カ月間に全体で0.9%、70歳以上で8.1%と大きく下がっていたと、10日前とは全く矛盾した情報を発信している。これらの一貫性に欠ける「専門家」の見解に、国民のみならず政府も混乱するのは当然だろう(関連記事「新たな感染者は減少傾向、重症者は横ばい」。

私は、国内での致死率の低下には、変異によるウイルスの病原性(毒性)の減弱が大きく関与していると考えている。しかしながら、これを生物学的に証明するにはさらなる時間がかかるため、現状では疫学データを科学的正確性をもって分析することが必須である。「専門家」の先生方が、疫学データを科学的に公正に分析できているとは思えない。コロナ対策における政府、「専門家」と国民の間の透明性の欠如について今さら非難するつもりはないが、矛盾した結論が相次いで国民に情報発信されている状況には不安を感じる。

日本が致死率の国際的標準化を先導すべき

SARS-CoV-2の変異株は世界中で既に5,000近くに達している。世界中で人の移動が制限されている現状では、国や地域によって流行しているウイルス株が異なっていることは当然で、これは複数の国のゲノム情報解析によって証明されている。

来年(2021年)の東京オリンピック開催には賛否が分かれているが、開催するとしても国内の健康被害(感染者数ではなく)を広げないために、病原性(毒性)の高い株が流行している国からの入国を選択的に制限する措置は必要と考える。そのためには、疫学データの科学的分析による致死率の国際的な標準化は、主催国である日本が先頭に立って行うべき課題と考える。

数カ月で失ったものが大き過ぎる

「専門家」による科学的分析の欠如は、「指定感染症」の漫然とした継続にもつながっている。1~2月はSARS-CoV-2の実体が全くつかめていなかったので「指定感染症」として1類感染症相当(無症状者の入院・隔離をさせながら、なぜか「2類相当」としていたが)の措置命令は仕方がないとしても、世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言を出した3月初めには致死率は2~3%程度であることが分かっていた。

しかしながら、政府は第一波が収束した5月中旬になっても、1類感染症であるエボラ出血熱(致死率50~90%)と同等の脅威的措置をなんの科学的根拠もないままに、漫然と医療現場や国民に強いてきた。その結果、ベッド、防護具、マンパワーが無症状や軽症の患者に消費され、医療資源が本当に必要な重症者から奪われるという医療危機が続いた。感染者への不当な差別や偏見という人権問題を生み出し、経済損失の累積は極限に達した。今ごろになって「指定感染症」の解除や緩和をしても遅過ぎる。数カ月で失ったものが大き過ぎる。

今のコロナ禍に「人災」の部分があるとすれば、その元凶は「夜の街」でも「意識の低い若者」でもなく、一貫性のない情報で社会を混乱させ、国民や医療現場に過剰な負担を根拠なく漫然と強要してきた政府、厚労省、そして「お抱え専門家」によるものではないのか。

引用元 : Medical Tribune 「コロナの弱毒化」は否定できない!?
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