どう違う? 新型コロナと従来のコロナ
感染や構造上の特徴を解説
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どう違う? 新型コロナと従来のコロナ
感染や構造上の特徴を解説

現在、各国が競って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬やワクチンの開発を進めているが、その有効性や安全性は依然不透明であり、そもそも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の特徴すら広く周知されているとは言い難い。国立感染症研究所ウイルス第三部四室室長の松山州徳氏は、従来のコロナウイルスとは異なるSARS-CoV-2の感染や構造上の特徴を解説するとともに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査件数やCOVID-19に関連する論文が少ないといった日本の課題を解決すべきであると第94回日本感染症学会(8月19~21日)で主張した。

呼吸器ウイルスに対するワクチンは終生免疫を得ない

ヒトコロナウイルス(HCoV)は、これまで人間の生活圏においてありふれた存在であり、かぜ症候群の原因ウイルスとしてはHCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1が挙げられ、SARS-CoV-2もこれらと同じ呼吸器ウイルスである。これらのウイルスは感染時、ほとんど血中に侵入せず、免疫反応の影響を受けにくいため、ワクチンを接種しても終生免疫が得られないという。

また、進行中の臨床試験で有効性が検討されている複数のワクチンにはいずれも副反応の懸念があり、一部ではマウスへの接種後に症状の増悪が確認されたとの報告もある(J Infect Dis 2019; 220: 1558-1567)。

こうしたことから、松山氏は「今のところ、安全性についての懸念が払拭されたSARS-CoV-2のワクチン候補はなく、ワクチンを接種しても再感染は防げないと想定すべきである。また、ワクチン接種による抗体依存性感染増強の発生リスクも注視しなければならない」と指摘した。

スパイクの特異なプロテアーゼ開裂部位により早期膜融合が起こりうる

松山氏は「SARS-CoV-2は従来のかぜ症状を呈するHCoV同様、小児に感染しても大半が軽症で済む一方、高齢者に感染すると強い病原性を示し、伝播力が強いという性質を持っている」と説明。加えて、「ウイルスのスパイクにおけるプロテアーゼ開裂部位に構造上の特徴が見られる」と述べた。

SARS-CoV-2のスパイク蛋白質にはS1とS2というサブユニットが含まれているが、この境界面に切れ目が入っている点が、従来のHCoVと異なっているという。

同氏は「この特徴により、SARS-CoV-2は他のHCoVより比較的早期に感染先の細胞に膜融合できるのではないか」との見解を示した。

SARS-CoV-2に対する治療薬に関しては、レムデシビルやナファモスタット、クロロキンなどの有効性が検討されていることに触れ、自身も研究に携わっているシクレソニドの抗ウイルス効果にも言及。従来、喘息治療薬として使用されているシクレソニドについては、肺胞や気道に直接作用し、血中移行性がほとんど見られないため、副作用リスクは低いとした。

なお同研究所の解析によると、日本国内で感染が拡大しているSARS-CoV-2は欧州系統の6塩基変異株が主流となっており、感染対策としてさまざまな自粛がなされた今年(2020年)3~4月ごろにいったん収束した。しかし、6月中旬から再びクラスターが顕在化したといい、1人でも感染者が存在すれば、感染拡大が再燃する可能性があるという。

PCR検査は病院や臨床検査会社で

さらに松山氏は、多くの外国と比較べ日本ではPCR検査の実施件数が極めて少ないことに触れ、「これまで日本におけるPCR検査は、流行状況を把握する目的で地方衛生研究所や検疫所などが中心となって実施するのみであった」とその背景を明かした。

しかし、SARS-CoV-2感染疑い例が多数存在する現状においては、「近年実用化している迅速検査機器の活用などにより、PCR検査を病院や臨床検査会社で実施し、速やかに結果を患者に通知する体制を整える必要がある」と主張した。

以上のようにSARS-CoV-2の特徴やその対策について論じた同氏は、同ウイルスに関する日本の研究論文が諸外国に比べて少ない状況にも憂慮を示し、「われわれが提出する論文の査読などをより迅速に行えるよう国内の学術誌を育成し、科学の評価体制を強化すべきである」と訴えた。

引用元 : Medical Tribune どう違う? 新型コロナと従来のコロナ
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