無症候の小児でもCOVID-19の感染源になり得る
米国の研究で小児の鼻咽頭ウイルス量が成人のCOVID-19患者を上回る
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無症候の小児でもCOVID-19の感染源になり得る
米国の研究で小児の鼻咽頭ウイルス量が成人のCOVID-19患者を上回る

米国Massachusetts総合病院(MGH)のLael M. Yonker氏らは、学校再開がCOVID-19の流行に与える影響を評価するために、米国の小児のSARS-CoV-2ウイルス量、ACE2発現レベル、血清抗体価などを調べ、軽症や無症候の小児でも成人のCOVID-19入院患者よりウイルス量が多かったことを報告した。結果はJournal of Pediatrics誌に2020年8月19日に掲載された。

SARS-CoV-2に感染した小児は重症化しにくいことが示されているが、無症候の感染小児は、集団生活や家庭で感染を広げる可能性がある。一方、低年齢の小児では、鼻咽頭のACE2発現レベルが低いことが示されているが、上気道でのACE2発現量は不明だった。また、まれだが一部の小児は多臓器系炎症性症候群(MIS-C)を起こすことも報告されている。SARS-CoV-2感染後の免疫反応を知ることは、予防治療戦略を構築するために重要だ。

そこで著者らは、小児患者のSARS-CoV-2RNAレベル、上気道のACE2発現レベル、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)に対する血清抗体価などを評価することにした。対象は、年齢が22歳以下で、COVID-19を懸念してMGH感染外来を受診した患者、またはCOVID-19関連の急性症状により入院した患者、もしくはMIS-Cで入院した患者とし、MGH小児CIVID-19バイオレポジトリに登録した。

本人または保護者の同意が得られた小児から、鼻咽頭スワブ、口腔咽頭スワブ、血液標本を採取し、SARS-CoV-2ウイルス量を調べた。ACE2の発現レベルの評価は、健康診断を受けに来た新生児と小児も対象に含めて、定量的PCRにより行った。それらの小児もMGH小児CIVID-19バイオレポジトリに登録した。血清中のSARS-CoV-2抗体レベルはELISAなどを利用して調べた。

MGH小児CIVID-19バイオレポジトリには192人の小児(平均年齢は10.2歳)を登録した。192人のうち、急性COVID-19と診断されていたのは49人(26%)、MIS-Cの診断基準を満たしたのは18人(9%)、125人(65%)は疑われたもののSARS-CoV-2感染陰性だった。感染陽性コホートは年齢11~16歳の患者が最も多く(16人、34%)、1歳未満の患者は2人(4%)だけだった。感染陽性者と非感染者の性別に偏りはなかった。MIS-C患者は1~4歳に多く(7人、39%)、男児が78%(14人)を占めていた。

レポジトリに登録された小児のうち、鼻咽頭スワブは83人から、口腔咽頭スワブは105人から、血液標本は100人から得られた。

SARS-CoV-2感染者と、COVID-19が疑われたが陰性だった患者の両方に、臨床症状が見られた。発熱は25人(51%)と62人(40%)、咳は23人(47%)と55人(36%)、頭痛は13人(27%)と33人(21%)だった。症状の割合には両群に有意差はなかった。感染陽性者に有意に多かった症状は、嗅覚喪失10人(20%)と咽頭痛17人(35%)だった。MIS-C患者の場合は、発熱に加えて、悪心/嘔吐(29%)、発疹(28%)が見られた患者が多く、上気道症状は少なかった。

成人患者では、心臓病、高血圧、糖尿病がSARS-CoV-2感染の危険因子であることが示されているが、小児のSARS-CoV-2感染者またはMIS-C患者の中に、これらの基礎疾患がある患者はいなかった。ただし、感染陽性者のうちの13人(27%)は肥満だった。SARS-CoV-2感染者に比べ、陰性だった患者に多かったのは喘息だった(19%)。

SARS-CoV-2ウイルス量を定量したところ、口腔咽頭スワブに比べ鼻咽頭スワブのほうがウイルス量が有意に多かった。小児の陽性者の標本中のウイルス量は、時間経過と共に減少した。

感染者との接触歴があったために無症候だったが検査を受け、陽性と判定された3人と、発症から間もない小児患者の鼻咽頭標本のウイルス量は、発症後2日間が最も高く、その段階では、重症化し入院した成人より有意に高かった(P=0.002)。また、発症から7日目以降のウイルス量も、入院している成人の重症患者より有意に高かった。ウイルス量は感染者の年齢とは有意な関係を示さなかった。小児の感染者由来の血清からは、ウイルスRNAは検出されなかった。

ACE2の発現量は、感染陽性小児と非感染小児、および健康診断を目的として受診した小児と新生児の鼻咽頭スワブおよび口咽頭スワブを対象にPCRにより評価した。ACE2の発現量は、非感染児に比べ、感染陽性児で有意に高かった(P=0.004)。しかし、感染陽性者のウイルス量とACE2発現量の間に相関関係は見られなかった。これはACE2の発現上昇は感染の感受性を増すが、ひとたび感染すればその後のウイルス量はACE2の発現量と関係がないことを示唆する。年齢はウイルス量に有意な影響を及ぼしていなかったが、ACE2の発現レベルは低年齢(10歳未満)の小児ほど低く(P=0.004)、年齢上昇と共に発現量は上昇していた。

ウイルスのスパイク蛋白質上に存在するRBDを認識するIgM抗体とIgG抗体は、軽症者に比べ重症のMIS-C患者で高かった。重症MIS-C患者では、SARS-CoV-2のみならず、一般的なコロナウイルス4種や呼吸器多核体ウイルス(RSV)、インフルエンザなどの呼吸器疾患ウイルスに反応するIgG抗体のレベルが上昇していた。この現象は、軽症MIS-C患者、感染陽性の小児患者、成人のCOVID-19入院患者、回復した成人患者などには見られず、広範な液性免疫反応の上昇が重症MIS-Cのマーカーであることを示唆した。

これらの結果から著者らは、小児はSARS-CoV-2に感染しても発症しないか軽症で済む一方で、軽症者や無症候者でもウイルス量は多いことがあり、流行の感染源となる可能性があると結論している。また、重症MIS-C患者では免疫系の調節異常が関連していることが示唆されたとしている。この研究はNational Heart, Lung, and Blood Instituteなどの支援を受けている。

原題は「Pediatric SARS-CoV-2: Clinical Presentation, Infectivity, and Immune Responses」、概要はJournal of Pediatrics誌のウェブサイトで閲覧できる。

引用元 : 日経メディカル 無症候の小児でもCOVID-19の感染源になり得る
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