コロナ抗体医薬、開発急ピッチ 米では治験最終段階
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コロナ抗体医薬、開発急ピッチ 米では治験最終段階

新型コロナウイルスの治療や予防に人工的に作った「抗体」を生かす研究開発が世界で進んでいる。先行する米国では既に最終段階の臨床試験(治験)が始まった。ウイルスを狙い撃ちして増殖を抑える抗体医薬品は高い効果が見込まれる半面、製造にコストがかかる。各国で認可され、大量生産が可能になれば普及も期待できそうだ。

新型コロナでは別の病気向けの既存薬を治療に使う取り組みや、ワクチン開発も進む。ワクチンは人体に備わる免疫の仕組みを活用し体内で抗体を作るよう仕向ける。抗体医薬品は、ワクチンでできる抗体を体外で人工的に作り、投与する。有効なワクチンがない場合は、抗体医薬品が特に重要になると考えられる。

海外では既に新型コロナ向け抗体医薬品の治験が進行中だ。米国にある抗体に関する非営利団体の調べでは、計13種類が治験に入っている。

最終段階の治験まで来ているのが米バイオ企業リジェネロン・ファーマシューティカルズだ。7月から、2種類の抗体を組み合わせて感染予防の効果を調べている。

米製薬大手イーライ・リリーがカナダのバイオ企業と共同開発する抗体医薬品も8月、最終段階に入った。高齢者施設の入居者らが参加し、薬の投与後4~8週間に感染や重症化を予防する効果が見られたか検証する。

日本も動き出した。福島県立医科大学の高木基樹教授らは今月上旬、新型コロナの元患者の血液に含まれる抗体を応用し治療薬の研究開発に乗り出すと発表した。ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ能力を持つ「中和抗体」を特定し、抗体の設計図となる遺伝子などを調べる。これをもとに人工的に抗体を複製し大量生産することを目指す。

まず元患者100人の協力を得て血液を解析する。11日には元患者の日本サッカー協会の田嶋幸三会長や、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長らと記者会見し、血液提供を呼びかけた。会見には第一三共の幹部らも同席した。

高木教授は「抗体医薬品はもともと人が持っている中和抗体をもとに作っており、高い効果が期待できる。安全性も高い」と強調した。このほか東京大学医科学研究所や医薬基盤・健康・栄養研究所なども抗体医薬品の開発を進めている。

抗体医薬品の新型コロナに対する作用は基本的に同じだ。新型コロナは体内に入ると細胞に侵入し自身のコピーを大量に作り、細胞を壊し外に出てくる。肺の細胞が壊れると肺炎などが起きる。

ウイルスが細胞に結合する際に用いる突起をブロックして侵入を妨げる中和抗体と同じ機能を持つ人工的な抗体があれば、発症や重症化を抑える効果が期待できる。中和抗体をもとに作るので、開発期間も従来より短くて済むという。

ただ、課題もある。効果の持続期間と製造コストだ。

抗体医薬品は通常、投与後2~4週間すると効果が大幅に落ちる。効果を持続させるには、月に1~2回の投与が必要だ。医療関係者や高齢者が発症や重症化の予防に使うことなどが想定される。島根大学の浦野健教授は「どんな人にどんな場面で使うか議論しておいたほうがよい」と話す。

抗体医薬は細胞で作るため、作るのに手間がかかる。一般的な化合物の薬と比べ、量産が難しく非常に高価だ。単純な比較は難しいが、がん治療に使われる抗体医薬品「オプジーボ」は2014年の発売時、高額だと議論を呼んだ。新型コロナの抗体医薬品でも、大幅にコストを下げる研究を進める必要がある。

▼抗体医薬品 ウイルスや細菌などの外敵を排除するため体内の免疫細胞が作り出すたんぱく質の「抗体」を応用した医薬品。がん細胞やウイルスなど病気を引き起こす物質にピンポイントで結合し、効果を発揮する。

引用元 : 日本経済新聞 コロナ抗体医薬、開発急ピッチ 米では治験最終段階
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