今冬のインフルエンザは流行しようがない
インタビュー◎国立病院機構仙台医療センターの西村秀一氏に聞く
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今冬のインフルエンザは流行しようがない
インタビュー◎国立病院機構仙台医療センターの西村秀一氏に聞く

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の同時流行も懸念される今冬。国は都道府県に対し、同時流行に備えた医療体制の整備を求めている。一方、COVID-19の流行を機に個人の衛生観念が向上したことから、今年はインフルエンザの流行が小規模に終わるのではないかとの見方もある。ウイルスの伝播などに詳しい国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一氏に話を聞いた(文中敬称略)。

──インフルエンザの感染経路としては、一般的に接触感染と飛沫感染が知られています。これらに加え、インフルエンザ学者の多くは、空気感染を起こすと考えているそうですね。

西村 逆に接触感染の方がレアケースで、ほとんど起きないことが分かっています。ですので、「手を洗えばインフルエンザを予防できる」というのは大きな誤解です。COVID-19に関しては明確なデータはありませんが、現在の世界的なアウトブレイクや大規模クラスターの発生は、接触感染では説明が付きません。インフルエンザもCOVID-19も、空気感染ないしエアロゾル感染が大部分を占めると考えてよいでしょう(参考記事:空気感染、「3密」と言ってるのだから認めて当然でしょ)。

とはいえ、手洗いなどの手指衛生は行わなくてもよいのかと言うと、それは違います。なぜなら、それにより接触感染を起こす他の感染症を予防できるからです。医療体制を逼迫させないためにも、発熱などのインフルエンザ様症状で救急外来を受診する患者を減らすという観点で、手指衛生は大事です。

──つまり、インフルエンザの予防には、マスクの着用や「3密」(密閉、密集、密接)を避けるといった感染対策が有効ということですね。

西村 その通りです。2009年の夏に新型インフルエンザが流行した際も、マスクの着用率が向上し、冬の流行は小規模に終わりました。また、今年の7~9月は南半球でもインフルエンザはほとんど流行していません。やはり、ソーシャルディスタンシングの励行やマスクの着用率の高さが要因だと考えます。

──では、今冬はわが国でインフルエンザが流行しない可能性が高いということでしょうか。

西村 断言はできませんが、その可能性は十分にあります。国民の大多数がマスクを着用し、「3密」回避の対策が各地で講じられている現状を踏まえると、インフルエンザは流行しようがないのではないでしょうか。実際、インフルエンザのみならず、RSウイルス感染症といった人から人にうつる感染症は軒並み報告数が激減しています。

──最近はGoToトラベルキャンペーンを利用して県外に出かける人も増えました。

西村 今後COVID-19患者数が急激に増えたとしても、緊急事態宣言のように人々の動きを制限することは現実的には厳しいでしょう。経済を回していく必要がある以上、COVID-19やインフルエンザにゼロリスクを求めることはできません。今のように、ある程度は個人の自由度を高めつつ、おのおのが「他の人にうつさないためにはどうしたらよいか」ということを考えて行動する必要があります。

引用元 : 日経メディカル 今冬のインフルエンザは流行しようがない
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