「ウイルス干渉」はコロナとインフルエンザでも起こる
北里大学大村智記念研究所特任教授の中山哲夫氏に聞く
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「ウイルス干渉」はコロナとインフルエンザでも起こる
北里大学大村智記念研究所特任教授の中山哲夫氏に聞く

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザは同時流行しないのではないか──。秋が過ぎ、COVID-19とインフルエンザの同時流行に対する懸念が高まる中、「ウイルス干渉」によって同時に流行することはないという考え方がある。1つのウイルスに感染すると、他のウイルスには感染しづらくなる現象だ。ウイルス学に詳しい北里大学大村智記念研究所特任教授の中山哲夫氏にウイルス干渉について話を聞いた(文中敬称略)。

──ウイルス干渉とはどのような現象なのでしょうか。

中山 ウイルス干渉は細胞レベル、個体レベル、集団レベルの3段階で考える必要があります。細胞レベルでの干渉は、あるウイルスが1個の細胞に感染すると、他のウイルスには感染しにくくなるという現象です。具体的な反応の1つが、細胞にウイルスが感染すると、防御反応としてインターフェロンを産生するというものです。インターフェロンは他の細胞が抗ウイルス状態になるように誘導する作用があるため、他のウイルスには感染しにくくなるのです。また、細胞レベルでウイルス干渉が起きると、個体としても他のウイルス感染症に感染しづらくなります。このように、ウイルスは宿主を奪い合うのです。

さらに、ヒト-ヒト感染により1つのウイルス感染症が流行すると、多くの人で抗ウイルス作用が誘導され、防御反応が高まるため、他の感染症の流行は小さくなります。これが集団レベルでの干渉です。例えば、RSウイルスは夏から秋にかけて流行し、インフルエンザの流行期には流行が収束しますが、これは集団レベルでのウイルス同士の干渉作用によるものであることが知られています。

──インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)においても、干渉作用は起きていると考えられるでしょうか。

中山 基本的には、どのウイルスの組み合わせでもウイルス干渉は起こると考えられています。COVID-19とインフルエンザも例外ではありません。COVID-19患者3834人を対象としたメタアナリシスによると、他のウイルス感染症に重感染した患者はわずか3%のみであることが報告されています(L Lansbury,et al. J Infect.2020;81:266-75.)。

また、WHOが公表しているインフルエンザウイルスの検出報告数を北半球と南半球に分けて見ると、北半球では1~2月頃まではある程度ウイルスが検出されていますが、COVID-19が流行し始めた2~3月以降はバタッと減っています。南半球でも、7~9月はほとんど検出されていません。衛生観念の向上に加え、インフルエンザウイルスとSARS-CoV-2の間でウイルス干渉が起きていることが十分に考えられます。

──では、今冬はわが国においてインフルエンザが流行しない可能性もあるのですね。

中山 私個人の意見としては、今年はインフルエンザがほとんど流行しないのではないかと考えています。理由として挙げられるのは(1)ウイルス干渉、(2)衛生観念の向上、(3)インフルエンザ流行国からの渡航制限──の3つです。特に、通年でインフルエンザが流行している亜熱帯地域からの渡航が制限されているため、まず大きな流行にはならないだろうと予想します。

引用元 : 日経メディカル 「ウイルス干渉」はコロナとインフルエンザでも起こる
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