季節性コロナウイルスの防御免疫は持続しない
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季節性コロナウイルスの防御免疫は持続しない

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおける未解決の問題の1つは獲得免疫の持続期間である。4つの季節性ヒトコロナウイルスによる感染からの洞察は、すべてのヒトコロナウイルスに適用可能な共通の特徴を明らかにする可能性がある。健康な個人を35年以上追跡し、同じ季節性コロナウイルスによる再感染が感染後12カ月で頻繁に発生することを確認したという報告である1)。

現在まで、SARS-CoV-2による再感染の知見は限られているが、再感染は起こり得ると一般的に考えられている。COVID-19の将来の波に備えるために、再感染に対する防御期間の解明に季節性コロナウイルスが有益なモデルとして役立つ可能性がある。季節性コロナウイルスには、HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-HKU1の4種類があり、すべて気道感染症を引き起こす可能性があるが、それ以外は遺伝的および生物学的に異なる。それらは2つの異なる分類学的属で、宿主細胞の親和性が異なる受容体分子を使用する2)。これらの違いを踏まえると、防御免疫の持続期間など4種類の季節性コロナウイルスが共有する特性ならば、SARS-CoV-2を含むすべてのヒトコロナウイルスを代表していると仮定できる。この研究の目的は、季節性コロナウイルスの再感染からの防御期間を調査することである。

季節性コロナウイルス感染症は無症候性なことも多く、ウイルス排出の期間は限られているため3)、感染を特定するためのウイルス検出法に基づく長期疫学研究(例えばRT-PCR)には呼吸器系検体の継続的な採取が必要である。感染後1年までは抗体レベルが上昇したままであるため、血清学的アッセイを使用することができる3)。したがって、1980年代から定期的に成人男性を追跡したコホート研究であるHIV-1感染とAIDSに関するアムステルダムコホート研究の血清サンプルを使用し、追跡中に季節性コロナウイルス感染が発生した頻度を調査した。免疫に影響を与える可能性のある重篤な疾患がない10人の健常者が選ばれた。1997年~2003年までのフォローアップの欠落を除いて、採血は1989年以前には3カ月ごと、その後は6カ月ごとに行われた。10人が継続的に追跡された累積期間は累計2473カ月以上だった。

再感染を検出するために、季節性コロナウイルスごとに、ヌクレオカプシド蛋白質(NCt)のC末端領域(構造的コロナウイルスキャプシド蛋白質の免疫優勢領域)に対する抗体の増加を測定した。

1人あたり3~17回の範囲の合計101回のイベントが、コロナウイルス感染として分類された。再感染までの期間は、継続的なフォローアップ期間中にのみ算出された。再感染期間は6〜105カ月の範囲であった。 HCoV-HKU1感染の数が少なく、HCoV-HKU1-NCt-ELISAの感度が低いために、おそらく過小評価されていたとしても、個々のウイルスの感染間隔の間には統計学的に有意差はなかった。

再感染は6カ月(HCoV-229Eで2回、HCoV-OC43で1回)、9カ月(HCoV-NL63で1回)でも発生したが、12カ月で頻度が高かった。6カ月で発生した再感染では、感染間の抗体の中間的な低下は観察されなかったが、6カ月を超える再感染間隔では、感染間の抗体の中間的な低下が見られた。この研究での採血間隔で最も短いのは3カ月間隔だが、3カ月で再感染した兆候は観察されなかった。したがって、季節性コロナウイルスによる再感染の最も短い間隔は6カ月と結論づけている。

理論的には、コロナウイルス感染によって誘導される抗体は、コロナウイルスへの幅広い認識能を持っている可能性がある。これを確認するため、種間でより保存性の高いN末端領域が含まれる、SARS-CoV-2の完全なヌクレオカプシド(N)蛋白質を使用し、追加のELISAを実施した。2人の対象者で認識能の広い抗体を保有することが明らかになった。このうち1人でこれらの抗体は次年以降も存在し続けた。この対象者の自己申告による症状と、抗体の誘導と維持を説明できるような病歴との関連は見いだされなかった。注目すべきは、認識能の広い抗体は、その後のHCoV-NL63、HCoV-229E、およびHCoV-OC43感染に対する防御に貢献しなかった。

今回の検討は、症状に基づいて検討された過去の研究に起こり得るサンプリングバイアスを回避するという点で独特である4)。今回は再感染に影響を与える可能性のあるウイルス遺伝子を特定することはできなかった。HCoV-NL63、HCoV-OC43、およびHCoV-HKU1はすべて、異なる遺伝子クラスターを示す2)。ボランティアを対象とした再感染研究は過去にHCoV-229Eを対象に2件報告されている。Callowらは、9人のボランティアのうち6人が同じHCoV-229E分離株に12か月間隔で再感染したことを示した3)。対照的に、Reedらによる研究では同じ株のHCoV-229Eを使用した場合、ボランティアの再感染は見られなかったが、異種株による再感染は確認されている5)。現在のSARS-CoV-2パンデミックでは、ウイルスがわずかに変化しているだけで、相違するSARS-CoV-2株による再感染の増加はほとんどないと考えられている。

集団免疫に到達するために、ワクチン接種や自然感染などの長期的な免疫を必要とする政策に依存する場合は注意が必要である。他の研究では、SARS-CoVの-2中和抗体レベルは、特に軽度COVID-19の後に、感染後最初の2カ月以内に減少することが示されていて6、7)、季節性コロナウイルスの抗ヌクレオカプシド抗体においても同様の低下が観察されている5)。しかしながら、抗体は免疫の1つのマーカーにすぎず、おそらくB細胞およびT細胞を介した免疫の影響も受けている。今回の検討では、防御免疫(細胞性および/または液性)が不十分な場合にのみ発生する可能性のある再感染を観察した。自然感染による再感染が4つの季節性コロナウイルスすべてで発生することを示し、SARS-CoV-2を含むすべてのヒトコロナウイルスに共通の特徴であることが示唆された。再感染は感染後12カ月で最も頻繁に発生し、防御免疫が短命であることを示している。

Dr. Hirayama’s Eye―抗体レベルの低下によるSARS-CoV-2の再感染はさらに研究が必要だ―

最近、SARS-CoV-2による再感染の報告が相次いでいる8-12)。COVID-19から回復した33歳の男性が142日後に再感染し、2回目の感染では1回目とは異なるコロナウイルス株が検出され、患者は無症状だった8)。疫学的、臨床的、血清学的、およびゲノム分析により、患者は最初の感染からの持続的なウイルス排出ではなく、再感染したことが確認された。SARS-CoV-2は、自然感染による集団免疫にもかかわらず、ヒトの間で循環し続ける可能性があることを示唆するものである。再感染した患者のさらなる研究は、ワクチン設計を考える上で貢献するだろう8)。また、42歳の免疫能正常の男性では、最初の感染は軽度であったが回復後51日目に再感染が起こり、肺炎を発症し、初回感染より重度であった10)。その理由として、免疫増強、より病原性のある株の獲得、または家庭内での二次的曝露としてより多い感染量であった可能性がある10)。再感染時の症状がより重度であったインドの医療従事者の報告11)もある。

また、SARS-CoV-2の再感染に関する総説が欧州疾病予防管理センター(ECDC)から報告されている12)。これは、EU/EEAの国々がCOVID-19にどのように対応し、サーベイランスすべきかを考える上で影響を与える知見である。以下の提案は参考になる12)。

──再感染した有症状と無症状の患者の感染性を含む、再感染の可能性とともに、免疫の期間、抗体レベルと防御免疫との相関性、ウイルスの放出、伝播性を含む分野の意思決定のために、より強固なデータを提供するためのさらなる研究が必要である。

──標準化された臨床検査に基づいて、再感染を分類するための症例の定義が必要である。再感染の可能性を調査するための基準も定義する必要がある。米疾病対策予防センター (CDC)はこのような基準を提案している。

── 再感染に関するデータは、サーベイランスシステム内で収集する必要がある。再感染だけでなく感染の事実を確実性に基づいて登録・分類することで、再感染の頻度をよりよく理解することができ、また、症例の臨床的および疫学的記述を可能にする。

──臨床症例の定義と検査手順を含む調査プロトコルは、臨床検査と検査の標準化を支援し、クロスセッティング比較やデータのプールを容易にする。

──十分に定義された患者コホートのフォローアップと再感染の分析は、この話題に関する貴重な洞察を提供する。医療従事者における定期的な検査は、定義された集団における再感染の有病率をよりよく理解するための体系的なデータを収集する機会を提供することができる。

──以前に感染したことのある接触者を管理できるように、濃厚接触者の管理に関するガイダンスと手順が必要となる。

引用元 : 日経メディカル 季節性コロナウイルスの防御免疫は持続しない
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